「カムイ外伝」の試写を、一足先に拝見致しました~!
原作があるとはいえ、まだまだ、現時点では映画の情報が少ない中でのレビューなので、なるたけネタバレしないように書ければと思っておりますが、多少はゲロっちゃうかもしれないので、そこはご勘弁を。
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映画を観ている時には余り意識していなかったのですが、見終わってまず最初に驚嘆したのは、宮藤官九郎はやっぱタダモンじゃない!ってこと。
彼が「カムイ外伝」の脚本を担当したということで、ガッカリした原作ファンも、逆に期待感を募らせた方もいらっしゃると思います。
まず、前者の方はまったく心配ございません。
そして、後者の方たちは、私同様に違った意味でクドカンの才能を再認識するハメになります。たとえ、崔監督との共同脚本とはいえ、ここまで極限的にセリフ量の少ない映画の世界を、一体どんな脚注を入れて書き上げたのか?そして、すでに確立されている白土三平の世界を、ここまで映像表現できる脚本に仕上げるとは・・・全くもって驚き(意外)でした。
セリフの量も少なければ、キャストも少ない(でも、エキストラも含め、実際はすごい多いんですけどね)。松ケンも常に画面に映ってはいるんだけど、余りしゃべらないので、”佇まいの演技”が中心なんです。たまに喋るとおっかない(笑)。まさに、『抜け忍 カムイ』がそこにいます。
映画の宣伝コピーとしては、”アクション・エンタテインメント”と謳っていますが、確かに要所要所のアクションは見ごたえがあって迫力満点ですけど、ハリウッド的な、アクションにかまけてストーリーがどっか行っちゃうような映画とは確実に一線を画していて、松竹が得意とするヒューマン・ドラマとして充分に成立させているので、いわゆる”忍者アクション映画”を期待してるとハズれてしまうかも。
ストーリー展開もそれほどは早くないので、非常にじっくりと、真面目かつ丁寧に、原作の持つ重厚さをそのまま映像に転化していると感じました。
ただ、やっぱりカムイのバックグラウンドについては描ききれない部分も多々あり、何と言っても映画化されているエピソードは、30冊以上に及ぶ原作の、ほんの断片でしかなく、映画の題材となった「スガルの島」の章の前からストーリーは続いていて、そしてその後にも続いていく”通過点”を描く難しさはあると思います。なので、この映画だけではカムイの「宿命」が伝わりにくいかもしれません。原作ファンのみなさんは、ここをどう受け止めるのか興味深いところです。
冒頭のナレーションや前半の劇中で説明はあるものの、登場人物の名前や(特に追手の、いわゆる”追忍-ついにん-”の名前が)、”夙谷(しゅくだに)”とか”奇ヶ島(くしくがしま)”とか、耳に入りにくい発音だったりするので、コミックを読んでいないと「?」かもしれません。
さぁ、ここから松ケン語りでございます(笑)。
彼が高跳びの選手だというのは、ファンならば周知のことで、これまでの演技でも足は速いんだな~っとは感じていましたが、こんなにも身軽にアクションをこなせるものかとビックリしました。「YOU、来年からSHOCK出ちゃいなよ」って言いたいぐらい(笑)。馬上の演技も堂に入ってました。
実は、彼は体が大きいので、時代劇はどうなんだろう?といぶかっていたんですが、スガル役の小雪さんも、そして不動役の伊藤英明さんも(関係ないけど監督の崔さんも・笑)、みなさんデッカイので、それほど気にはなりませんでしたね。
松ケンは一見ひょろひょろに見えるんですけど、さすがにアクションの訓練を重ねていたせいか(しかも日焼けしてるし)、細いながらも意外に”魅せる”体になっていて、ファンとしては萌えポイント炸裂です(笑)。
今までの、どの作品でも見たことのない表情とセリフ回しには圧倒されますよ。カムイという、寡黙ながらも内には大きなエネルギーを秘めた薄幸の青年像を、眼の演技ひとつでやってのけるんですから(今回、ヨダレは垂らしておりませんのでご安心を・笑)。
私のツボは、夜の海でスガルと海中で闘った後の浜辺のシーン。
この時の松ケンの顔はカムイにしか見えない。んでもって、カッコイイ!
ひとつ、ひとつのアクションが生々しくてリアルなので、見ているこちらにも痛みが伝わってきそうな気がするんです。
カムイが持っているのは短剣なんですが、刀さばきは短いだけに、力がこもっている感じがすごく良く伝わってきて、これまた短剣だけに人を(というか肉を)切る重々しさがリアルです。
ちなみに、私が原作を読んで最もワクワクしていた”下帯シーン”もありますよん(きゃー)。
ラストの対決シーンでも、砂地にズルっと足を取られたり、刀が交わる時に力が漲る感じや、刀がぶつかりあうところが不安定なところなんかも非常にリアルで、文字通り必死なのがひしひしと伝わります。
言うても、リアルの斬り合いなんて見たことないんですけどね(笑)。
つまりは、スマートな美しい殺陣じゃないってことです。
まさに死闘なワケで・・・。
刀にべっとり血のりがついたり、斬られた追忍はフレームアウトしているのに血しぶきの音だけがしたりするのも、ホント生々しい。
生身の人間(キャスト)が、これほど完成度が高いのに、それとは反比例して、ワイヤーアクションやCG処理には総体的に多少の技術不足があるのかな~と。虫が動いているような違和感のある動きが多くて(ゴラムみたい)、それでも、現在日本で出来得る最高技術が結晶しているものと推察するので、それを思うと、やっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」とか「ハリー・ポッター」ってスゲエんだなーって改めて思いました。
あと、カメラがパノラマパーンする場面が何度かあるのですが、丸の内ピカデリーのスクリ-ンが良くないのか、撮った画がもともとこうなのかは分かりませんが、カメラの動きに画像がついていってなくて、ちょっと気持ち悪くなりそうでした(苦笑)。それだけ画面がデカイってことかもしれませんが。とりあえず、丸の内ピカデリーで見る方は2階の前の方で見た方がいいですよ。
それから、鱸、鮫、雉、鷗といった動物の描写があるんですけど、ちょっと突っ込みどころも多いんですけど、白土先生の世界観を巧く映画にも描写しているな~と感心しました。
ひとまず、原作ファンのみなさんには是非見て頂きたいし(言いたいことがあっても、まず見てから判断してください)、松ケンファンは必見!ってか、見ないと絶対ソンします。
「L」や「クラウザー」で食いついてくれた若い世代の方にも、同じノリで「カムイ」も1つのキャラクターとして捉えて頂ければ、世界観に没頭できると思うので(サスペンス性も面白おかしくもないですけど)機会があれば見て頂きたいですね。
カムイが心を許し初めて笑顔を見せる場面はキュンとなるし、サヤカがカムイの着物を抱きしめるシーンも女性ならグッときます。
そして、カムイの表情が柔らかくってきて、サヤカを見る瞳が優しさに満ちてきた、まさにその時に悲劇が起きるんです。
また、振り出しかよ・・・って思いに駆られます。
もう人は斬りたくないのに、生きるためには斬るしかない。
自分が存在しているだけで、多くの人をも傷つけてしまうというカムイの息苦しいまでの苦悩は、スクリーンを突き抜けて観ている者たちのリビドーを揺さぶってきます。
私は女性として、人間性の再生を救いようもなく目指すカムイを、そして果てしなく枯渇しているカムイを、ただ抱きしめてやりたくなりました。
「カムイ外伝」2009年9月19日公開です。
既にDVDが出るのが待ちきれません(笑)