新国立劇場2016/2017シーズンの演劇公演『君が人生の時』の出演者が発表に。坂本昌行、野々すみ花など、多彩な実力派たちが顔をそろえる。
「日本の演劇がどのように西洋演劇と出会い進化してきたか」をテーマに、新翻訳で送る「JAPAN MEETS…−現代劇の系譜をひもとく−」シリーズ。日本の近代演劇に大きな影響を与えた海外戯曲を新たに翻訳し、現在によみがえらせてきた同シリーズの第11弾として、本作は上演される。
ウィリアム・サローヤンが発表した本作は、1939年ニューヨークにて初演され、ニューヨーク劇評家賞とピュリッツァー賞を受賞(本人は辞退)した作品。戦争の影が忍び寄る時代の中、社会の周辺で生活を送り、逆境の中でも誠実であろうとする人びとの健気な美しさを描き出したものだ。
演出を務めるのは同劇場・演劇芸術監督の宮田慶子。翻訳は『星ノ数ホド』の翻訳で、小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した浦辺千鶴が手掛ける。
■宮田慶子
サローヤンの『君が人生の時』を初めて読んだのは、20代後半だったと思う。正直に白状すると、その時は「何も理解できなかった」というのが事実だ。無理もない。この戯曲は、人生の機微も陰影もわからない若造なんかには、とても理解できない“ホン”なのだ。以来、折りにふれ、ときどきページを開きながら、歳を重ねるうちに、だんだんと“気になるホン”になっていった。そしてついに“やりたいホン”になり、そして、自分で手掛ける幸運な機会にめぐり会えた。身の引締まる想いだ。1930年代の大不況から、次第に第2次世界大戦への重苦しい気配が色濃くなる中、アメリカ演劇界を席巻していた社会劇や政治思想の強い作品に背を向けるように、1939年にサローヤンの『君が人生の時』は生み出された(ちなみに、ソーントン・ワイルダーの『わが町』は前年の1938年の発表である)。主人公ジョオをめぐる、行き交い出入りする人びととのさりげないドラマが積み重なりながら、“時”に包まれた世界が組み上がる。人間をいとおしみ、生きる喜びを紡ぐことによって、不幸な時代への警鐘を鳴らす作者の想いは、知性と誇りを切実に求めている。音楽やダンスも絡みながら、世界の縮図のような“美しい”時間がつくれたら……、と思う。
■坂本昌行
初めて台本に目を通した時は、理解できない自分がいました。では、今はもう理解してるかと問われると困ってしまうのですが。それだけ登場人物たちの微妙な心の揺れや葛藤など、繊細なお芝居が要求される作品だと感じました。心強い役者の皆さんそして演出家の宮田慶子さんと一緒に、また新たな『君が人生の時』をお客さまにお届けできたららと思います。
新国立劇場の演劇公演「君が人生の時」のご紹介。新国立劇場では芸術監督の独創的かつ意欲的な企画のもと、年間を通して作品を上映しています。
情報源: 君が人生の時 | 新国立劇場 演劇