えー、それでは本日は映画の感想を書いてみようかな。
正直言って、それほど期待をしていたわけでもなく、内容も事前にそれほど知っていたわけでもなく(どんなキャスト陣なのかも知りませんでした)。ですから、普通のお茶間の皆さん同様に、雑誌などに掲載されている場面スチールとか、CMぐらいしか情報がなかったわけですが、その非常に少ない情報量から予想でき得る展開の正にそのまま、と言った感じでした。
いわば思っていた通りの内容なので、いい意味でも悪い意味でも思惑を裏切ってはいません。ただ、あくまで全てが平均値というか、何もわざわざ映画でやらんでもという印象でして、ハートに訴えかけてくるメッセージ性は弱かったなーと思わざるを得ません。ホント2時間ドラマで十分だったかも。
逆に言えば正攻法でして、80年代のトレンディドラマ風でもあり、はたまた韓流的アプローチとも言える”昭和の匂いが強い”ストーリーだと思います。番宣でイノッチがうまく言いまとめている通り「世代に関わらず感じる部分がある」と言うのはその通りなのかも。非常にシンプルな恋愛モノ、友情モノが好きな方にはいいのかもしれませんが。
同じアングルで同じシーンが頻出するのは単純過ぎたし(時間経過を表現するための「狙い」だったと監督さんはおっしゃっていましたが)、清木場くんの演技は植物状態の時はまだしも、その後死に至るまでの肝心な時間経過をうまく表現できずに終わってしまったかなー。とても病床に臥せっている人には見えないほど健康的だっし、セリフ回しも単調。なので、見ている方に彼の悲壮感が伝わらない。イノッチと役柄を逆にした方が良かったんじゃないのかなぁむしろ、泣かされたとするなら(一滴も泣きませんでしたけど・笑)周囲を固めている蟹江敬三さん、いしだあゆみさん、戸田恵梨香ちゃんの演技の方かな。
この映画には幾つかの見せ場があると思うんですが、そのどれもがありきたりで、何かのドラマの焼き直しとしか例えようがないんですよ。
例えば、武志(清木場くん)が薫にプロポーズするシーン。
3人が保っていた聖なる三角形とやらの均衡が崩れる重要なシーンですね。これがあり得ないぐらいあっさりとして盛り上がりに欠けてて、お互い暗に想いを寄せ合っていた宏樹と薫の微妙な心の動きに今ひとつ重みを感じませんでした。
そして、武志が結婚式当日に事故に遭う。
しかも、自分たちに良く似た子供たちを見ていて、ついうっかりしたところへ乱暴な運転の対向車が突っ込んでくるという・・・もうこの手は昼ドラ以外通用しないと思うんだよなぁ~。
武志が植物状態になった時に、私の脳裏をかすめたのは雑誌などに掲載されていた、”武志が乗った車椅子を綾が押している”という映画のスチール写真。あのシーンはこれから出てくるってことですから、武志が戻ってくることを百も承知で見なきゃならないんですよ。しかも、そのタイミングも見え見えで、武志が植物状態になって3年が過ぎ、周りからの後押しもあってようやく宏樹と薫が結婚に踏み切ろうと決心した、その夜なワケです。宏樹は「武志が戻ってくるまででいいから」ってわざわざ言うんです。このセリフさえなければ良かったのに、これがあったが為に「あー、きっと武志は結婚式に目が醒めんねんなー」と、易々と想像できてしまう結果となるわけです。
そして、まさに武志の病室で結婚報告をした途端に武志は目覚める・・・。とんだ興ざめでしてね(苦笑)、あり得ない、あり得ないと私は心の中で呪文のようにつぶやきながらドン引きしておりました。
しかも、最後までキッチリとガッカリさせてくれるんです。
武志は覚醒したのに、あと1ヶ月の命と知って薫と宏樹の結婚式が見たいというんですね(実はここに至る間にも、武志の記憶が欠落していて、自分が薫と結婚しようとしていたことを覚えていないというオソマツなオマケもついているのですが)。そして、そしてですよ、宏樹と薫の誓いの言葉を聞いた後で武志はその場で息を引き取るんです。正直、この瞬間私は「キターッ」って思いましたね。
ただ、周囲の役者さんがとても素晴らしいんです。
岡本綾ちゃんもイノッチも演技はとても良かったと思いますよ。
いかんせん、これら役者さんたちを上手く使いこなせていない。清木場くんは初めての映画出演なので、その分をハンディキャップとすれば及第点をあげてもいいのかもしれないけど、それにしてもちょっと絞りが甘かったなぁ・・・。
カメラの割りも平凡でつまらなかったし、何もかもが奥行きが浅くて薄っぺらいんです。この映画で涙できる人は本当に純粋なんだと思いましたね。その心を、もはや持ち合わせていない自分が少し残念です。
ただ、中高生の諸君には見てもらいたい映画かも。
この映画を見て、ここで描かれている友情、恋愛、家族愛といった美しい人間関係がまだ自分には確立できていないと感じたなら、映画を手本にして、すぐにでも良い関係が作れるよう”自分から”努力して欲しいので。
セカチューとか、今会いとか、黄泉がえり辺りが好きな方なら是非。