はぁ~あ・・・終わっちゃった。
8月にヤサコロ(注:12人の優しい殺し屋)が終わった時の虚無感よりは、幾分か慣れてきましたけど。ってか、なんか役者と同様に、観ているこっちも回を増すごとに成長していった不思議な感じがあって、最終公演が終わった今、非常に満足感というか”やり切ったな~”という達成感に包まれているのですよ。
ちなみに、あたしゃ、ただの客ですがね(笑)
もうね、頭が禿げてゲロが出そうなくらい楽しみにしてたんです。
で、初めて見た時に木村了くんの出番の少なさに目がテンになり、でも、その少ない中での内容の濃さに夢中になって、日々精進していく彼のお芝居と殺陣に圧倒される日々・・・。
25年来の新選組フリークとしては、何かと突っ込みドコロも多い内容ではありましたが、ほどよく人物像やイベントが史実に基づいていて、うまくアレンジしたもんだなぁ~と感心しました。とりあえず、沖田総司が女だった的なイジられ方をするオマージュ作品よりはなんぼかマシです。
ゲームやアニメのファンの方も多く来場されていたようですし、そうした皆さんからも概ね舞台版は快く受け入れられているそうなので、それはそれは嬉しいですね。個人的には余り原作に縛られず、自由な発想で舞台ならではの演出を求めていたのですが、いたずらに暴走する必要もないですし、今回はこれで良かったんだな~と思いました。
ただ、新選組について知識のない方には、1回見ただけだとちょいと難しいクダリもあったかもしれませんね。私は逆に新選組のお話だったからこそ、木村了くんが出ていない場面でも楽しく拝見させて頂くことができました。自分の好きなテーマが舞台化されることって少ないので、なんか懐かしい気分になれましたし。
沖田総司を演じた窪田正孝くんは、キャスティングが決まった時はちょっとガッカリしたんですが(ごめんね)、素晴らしい演技と殺陣で総司を熱演してくれました。窪田くんは「間」が絶妙なんですよ。実にいい間を持ってるんです。舞台って決まり切ったセリフの応酬なので、とかくピンポンのように単調になることがあって、何度も観ている側としては、回を増すごとに余裕が出てくるもんですから、「そのセリフ言うなら、もう少し溜めてからじゃね?」って違和感を憶えてしまったりする場面もあるのですが、窪田くんは毎回独特な溜めがあるんですよ。彼のセリフでちょっと場面が落ち着くところがあるんですね~。その空気感は見事だと思いました。これをきっかけに彼の中で沖田総司という人物が残ってくれたらいいな。
他のみんなについても一人ひとり語りたいんですが、興味のない方もいると思うんで絞って書きたいと思います。その割にゃ充分長いですけど・・・。
触れないわけにはいかない座長の早乙女太一くんですが、聞きしに勝るしなやかで安定感のある殺陣には魅了されましたね~。16日夜の部では、後半の見せ場である階段のシーンで、太一くんの持っている刀が折れて階段の下に落下してしまい、敵役のJACさんが咄嗟に階下から駆けあがってきて太一くんと揉み合う芝居をしながら、しっかりと自分の刀を握らせるという美しいフォローもあったりしましたが、この夜の太一くんは本当にヤバイぐらい気迫に満ちていて恐ろしいほどでした。
木村了くんも洋装の上着のボタンが殺陣終わりの絶妙なタイミングで取れてしまい、静寂の中、カラーン、コンコンコンとボタンの転げる音が響いていましたっけ。でも、これって本気で竹光が体に当たってるから取れたんだよな~と、ちょっとゾっとしましたね。あまりに迫力あり過ぎて・・・。木村了くん演じる風間千景と総司との一騎撃ちも、物凄いスピードで刀をガツンガツン当てるんで、相当腕に振動が伝わると思うんですが、時折勢い余って刀の柄に近い部分に当たったりしてヒヤっとするんですが、その分臨場感はタップリで本当に戦ってるみたいなんです。
2幕の前半、甲陽鎮撫隊として流山にのがれた新選組の場面、洋装に身を包んだ歳三と島田魁、和装のままの近藤勇とが語らうシーンですが、新選組ファンであれば、自ずとこの後、近藤が捕らえられて斬首されることは分かるわけです。なので、一抹の絶望感を感じながら見守ることになるわけですが、そんな感情を促進するかのように、ビジュアル的にも歳三と島田の洋装に対して、完全に近藤の羽織袴姿は、もはや時代遅れも甚だしく、それがひたすらに悲しいんです。やっぱり、舞台であっても、実際に自分の目の前に近藤勇がいて、土方歳三がいるわけで・・・。この二人の今生の別れが今繰り広げられているんだと思ってしまい、このシーンは総司が死ぬシーンより断腸の思いで観ていました。
総司は現実には病死ですが、この薄桜鬼では千景に斬り殺されるので、史実とまるで違うからまだ耐えられるんです。でも、ここでもまた新選組ファンにはグッとくるセリフがありまして(笑)、歳三が千景に「総司を武士として死なせてくれて礼を言う」というセリフがそれなのですが、まさに武士として刀を交えて死を迎えること、それが天才剣士と謳われた沖田総司にとっての本懐だったと思うんです。それすら出来ず、労咳という病で亡くなった彼の無念を思うと、歳三の言葉がまんざら作り話でもないように思えてきまして・・・(泣)。
この舞台での歳三は、新選組の副長として浪士やどこのウマの骨とも分からぬ輩を束ねて軍備を早期に強化する為に、羅刹(らさつ)に頼るわけですが、吸血衝動に耐えかねて堕ちていく羅刹を同じ新選組の隊士の手で粛清するという負のサイクルは、実際の新選組における「局中法度」によって、がんじがらめになった多くの隊士が死んでいった事実に照らし合わせることができるように思います。
歳三の「本物の武士になる為」という、余りにも純粋すぎた野望は、風雲急を告げた幕末という時代において、あっという間に置いてけぼりにされ、その虚しさを語る歳三のセリフはいちいち胸を刺すんですよねぇ。あと、純血の鬼一族である千景に、羅刹に身を堕とした歳三が「まがいもの」と呼ばれる場面での歳三の名ゼリフ「まがいものだろうが何だろうが貫けば『誠(真)』になる」、いいですね~。
そして、この舞台に登場する人物すべてがそれぞれの”義”を成す為に戦い、存在していることも美しい刹那に溢れています。
最後に、我らが木村了くんですが、もうね彼のポテンシャルの高さにはアゴが外れますよ。
とにかく、芝居といい殺陣といい、まるで10年選手のような落ち着きぶりで、安定感はハンパなく、私が観劇した数回だけを取ってみてもノーミス。そして、毎回見るごとに成長していく動きとセリフ回しのバリエーション。彼が出てくる場面はほとんどが殺陣なのですが、舞台の構成というか、殺陣の挟み込み方そのものも良かったんだとは思いますが、殺陣後のセリフも息切れしないし、一体どんな呼吸をしてるんでしょうね。確かに客席に背中を見せるシーンも多いのですが、かと言ってあからさまに深呼吸をしたら肩が動いてしまいますし、背中を向けてはいるもののセリフを吐いているので、むしろセリフがない方がキツイのかもしれません。
殺陣の中には、助走ナシでその場でジャンプ&ターンして斬るって技も何度かありますが、これも華麗に決めてましたね。日程が後半になるにつれ跳躍点が高くなっているように思えました。
この舞台の殺陣は、1回に集中して大立ち回りをする”見せ場作り”ではなく、随所に殺陣が出てくるので、やっぱり力の配分とか精度を考えて、1回が非常に短いんです。でも、その短い中で高度な技や掛け合いが多いので、アンサンブルの方たちも相当な運動量だと思うんですよね~。
でもって、木村了くんたらば、何と言ってもとびっきりに美しいんでございますよ。
もうね、目が洗われるぐらい。彼氏が出てくると一陣の風が吹くぐらいの清涼感。何つったって、あたし、この舞台の期間中、ホルモンバランスが最高潮でお肌ツヤツヤでしたもん。外的要因ってか、目から摂取するサプリメントっていうか、美容液というか、ナノイーって言うか・・・。いや、マジで!!それくらい、木村了くんて女を呼び覚まさせる色艶に満ちたオトコなんざますよ、奥様!
もうね、出番が小刻み過ぎて、彼が出てくるとセリフがぜーんぶブっ飛んでしまうので(笑)、冷静に見れるようになるまで随分時間がかかりました(笑)。戦いの場面では、まさに”鬼”の形相でして、2幕終盤の羅刹とのバトルシーンは鬼気迫る動きで何度見ても圧倒されてしまいました。鞘に刀を納めるときのさばき方も、力強く鮮やか!二刀流や左持ちも含め、刀の持ち方にも細かくバリエーションがあって、とにかくあれだけの細かい動きを習得するのは、さぞや大変だったことと思います。
刀の持ち方にもいろいろありましたが、和装の時には大小のかけ方も2パターンあって、羽織を被せて刀に幕がかかったように後ろ側に張らせる姿が至極秀麗で大好物でした。カツラで顔は見えにくいし、真正面を向く芝居が少ないので拷問にかけられているようなんですが、それでも正眼のお姿を見ると後ろの壁に叩きつけられるほどの波動があるんです。毎回木村了くんを見るたび思いますが、彼がまとっている空気ってのは一種独特なんですよ。威圧的とは違う他を圧倒する存在感があるんです。
2/2にDVDが発売されるので、ちょっとでもご興味のある方は是非見てみてください。
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