堂本光一が主演を務めるミュージカル『Endless SHOCK』が上演中だ。今年も含めると17年間、全公演即日完売を続けるミュージカルであり、単に“タレント人気”では済まされない実績を誇る作品でもある。3月末の千秋楽では、ついに上演1500回を達成する“SHOCK”。今年の公演から、長く愛される魅力を探る。
◆総動員数270万人超え、毎年15万人以上が観劇するミュージカル
『Endless SHOCK』を鑑賞することは、たとえばオリンピックのような競技大会で、一人のスーパーアスリートが自己記録を更新していく瞬間を目撃するのに似ている。一回一回の公演が、紛れもない一回性のドキュメントであり、観るたびに、人間の果てしない可能性を痛感させられるからだ。
“堂本光一、ミュージカル単独主演記録1位を更新”などというニュースを耳にしても、ミュージカルに興味のない人は、まったくピンと来ないだろう。でも、「約1,900人のキャパシティを誇る帝国劇場を、2000年から毎年2ヶ月近く満員にしている」(年によりばらつきはあるが)と聞けば、少しはその凄まじさがイメージできるのではないだろうか。地方公演も合わせると、総動員数は270万人超え(今年の千秋楽時点での見込み)。単純計算すると、毎年15万人以上が“SHOCK”を観劇したことになる。しかも、日本の、いわゆる大箱で上演されるミュージカルといえば、ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドでヒットした演目がほとんどである中、『Endless SHOCK』は完全オリジナルで、主演の堂本光一は、2005年以降は演出や作曲にも積極的に関わっている。
そんな日本を代表するミュージカルが、今年も2月1日に開幕し、3月31日の公演をもって、公演回数1,500回を達成する予定になっている。
◆自由度高く魅せる“ショー”、マイケルの振付師によるダンスの可能性
ジャニーズのステージは、とにかく自由度が高い。『Endless SHOCK』も、ショーに賭ける若者たちの葛藤を描いた群像劇ではあるけれど、”歌って踊って芝居する”以外にも、イリュージョンあり、フライングあり、和太鼓のセッションあり、殺陣あり、22段の高さからの階段落ちありと、劇中劇の名を借りて、魅せる“ショー”としてのあらゆる要素がこれでもかというほど詰まっている。そして、その中心にはいつも“コウイチ”役を生きる堂本光一がいる。
劇中で使用される曲の中には、光一自身が作曲したものも複数あって、そのどれもが『Endless SHOCK』の物語性を、より明快にかつ色彩豊かに彩っていく。ダンスも、和の要素をふんだんに盛り込んだものもあれば、ストリート系のダンス、民族舞踊的な趣を感じさせるもの、官能的なペアダンス、レビューのようなゴージャスな群舞まで、1人の振付家によらないバラエティ感が存分に堪能できる。2月11日は、マイケル・ジャクソンの振り付けを担当していたトラヴィス・ペインが観劇に訪れたというが、彼が振り付けた「Dead or Alive」や「Higher」、「MUGEN(夢幻)」といったナンバーは、いわゆる“ミュージカルにおけるダンス”のレベルを超越している。奥行きのあるステージを駆使した群舞のフォーメーションの多彩さや、振り付けに込められたストーリー性など、ショーの世界に取り憑かれた若者たちが主役の『Endless SHOCK』だからこそ具現化できたダンスの可能性に溢れているのだ。
◆堂本光一により年々ブラッシュアップ、進化する舞台
とくに、2017年の『Endless SHOCK』は、前半の対立の構図から、 終盤の「Higher」からの流れで、カンパニーが心を一つにするという物語のテーマ性がより際立つような構成へと、細部までブラッシュアップされていた。言葉で語られたわけではないのに、「あぁ、今みんなの心が一つになっている」ということが、演者の表情や気迫によって、リアルに胸に迫ってきて本当に感動的だった。
観客にリピーターが多いことは『Endless SHOCK』の特徴だけれど、毎年、「最高のものを観た」と思っても、翌年はさらに修正が加えられてより良いものになっていて、その都度驚かされる。それこそが、“進化する舞台”と呼ばれる所以なのだろう。今年は、思わず手拍子したくなるような新曲が盛り込まれたり、オーケストラピットをこれまで以上に活用し、ステージと客席が近く感じられるような工夫がなされていたり、オーケストラの生演奏や回想部分のナレーションにより臨場感が感じられたり、大きなことから微細なことまで、観客がより引き込まれるような演出が加えられていた。一方で、胸が締め付けられるようなハードな殺陣からの階段落ちやフライングの軽やかで緻密な美しさなど、定番の見せ場は、さらに安定感を増している。一つのミュージカルの中に、伝統と革新とを共存させることができるのは、オリジナルならではの自由度である。『Endless SHOCK』のファンは、その伝統と革新の両方を感じたくて、充実の公演を堪能した後も、この作品が続いてくことを、心待ちにするのである。
◆世界的にも類を見ない、“生命の燃焼”を具現化した娯楽作品
仕事の一環であっても、毎年『Endless SHOCK』を観るたびに、必ず感動している自分がいる。そして、その感動の度合いが、毎年更新されていることにも我ながら驚嘆してしまう。初めて観たときより2度目のほうが、5年前より去年のほうが、去年より今年のほうが、心が揺さぶられる。誰かに感情移入するようなストーリーではないし、主人公のコウイチは死んでしまうけれど、そのこと自体がセンチメンタルに描かれているわけではない。『Endless SHOCK』から受けるのは、生命の燃焼を目の当たりにしたときの衝撃だ。これをやり遂げたら、もう肉体は死んでしまうかもしれない。でも、幕が終わるまでは、死ねない。劇中でコウイチは、幽霊となっても魂を燃やし続け、執念で最後のショーをやり遂げる。それはまさに、堂本光一オリジナルの、彼にしか演じられない役なのだ。
全文は以下にて。
情報源: 世界的にも類を見ない、堂本光一ミュージカル“SHOCK”完勝の理由 (オリコン) – Yahoo!ニュース