Chapter 27を見てきました~※ネタバレ※

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本日、試写で「チャプター27(chapter 27)」を見て参りました!
えーと、この映画はですね、ジョン・レノンを銃殺したマーク・チャップマンという男の”半ドキュメンタリー”映画です。
1時間半弱という短い作品で、予算も余りかかってないので、ちょっと「ディスカバリー・チャンネル」とか、BBCのドキュメンタリーみたいな匂いもします。
狂信的なレノン・ファンであるチャップマンが、犯行に及ぶまでの3日間を、彼がニューヨーク入りした日からカウントダウン式にたどっているわけですが、とにかく主役のジャレッド・レトが「ヘドが出るほど」チャップマンにそっくりで、だからこそ余計にこの映画の内容には全くフィクションがないように感じられてしまうんですが、映画化にありがちな装飾もされています。
とにかく、我々レノンファンにとっては悪魔以外の何者でもないチャップマンなので、彼を理解しようと思ったことは一度もないですし、そうしようと努めたところで到底無理なんですが、でもこうして映像として見ていると、彼も「ファン」のひとりであることは確かで、そこは我々と何ら変わりはないんですよね~。でも、明らかに”並み”の精神状態や思考回路ではない。どうして同じ「ファン」なのに、彼のような凶行に走ってしまうんでしょう?
なんか、毎度何万人という観客を集めるアイドルのコンサートに通う身としては、背筋が寒くなる気持ちです。
映画を見る前に最も懸念していたのは、悪魔以外の何者でもないチャップマンを、ダークヒーローのように扱ってやしないだろうか?という点でした。それは、レノンが死んだ時に僅か1歳だったという若い監督がメガホンを取っているという情報に不安を感じていたからです。
結論から言うと、決してヒーロイックには描かれていませんし、むしろ作り手側の感情なんてこれっぽちも入ってないかも。
それぐらい淡々と事実(と、時々フィクションとを)を再現して、そこに潜む奇妙な偶然を拾い集めている感じですね。だからこそ、尚の事「なぜ今この映画を撮るのかな?」という疑問も沸くんですよね・・・。
ダコタハウスから黒い死体袋が運び出されるニュース映像をリアルタイムで見ていた世代としては、ただ胸が締め付けられるばかりなのですが、特にチャップマンがレコーディングに出かけるジョンにサインをもらう時、ジョンに掛けられた「That’s all you want?」(他には何かして欲しい?)という言葉が忠実に再現されてたのがナマナマしかった。
チャップマンの足取りを映像と共にたどっていただけに、見ているこちら側も「遂にこの日が!」という気持ちになっているので・・・。
ダコタハウスのゲートをくぐって中に入ろうとする姿を目で追うチャップマンと、その後で「Mr.Lennon!」と声を掛けざまに5発の銃弾をジョンの背に浴びせる瞬間は目を閉じてしまいました。
マーク・チャップマンは「ライ麦畑でつかまえて」に触発されて犯行に及んだと言われていて、この小説は犯罪を語る際には象徴的に語られることが多いのですが、もちろん私も何度となくこの小説を読みましたが、これがどうして犯罪のキッカケになり得るのかは理解できませんでした。
そんなの当たり前なんですよね、だって私はチャップマンではないし、彼だけがこの小説に自分を投影していたわけですから。
確かに奇妙な偶然は多いし、そこにチャップマンがシンパシーを抱くのも分からないではないのですが、私に言わせて見れば、それはすべて彼自身が妄想的に”そうなるように”仕向けていただけのような気がするんです。
最後にチャップマンは「小説が自分の血管に流れ込んで一体化したんだ」と言いますが、それは全くの逆ですよね。彼が小説の中に入ってしまったんです。小説は何か消化不良な感じというか、後味が悪い感じで終わるんですが、彼の犯罪についても同じことが言えるのではないでしょうか。
「ライ麦畑でつかまえて」を読んだことがない方は、是非、この映画を見る前に読んでおくことをお勧めします。ジョンについて学んでおく必要はないと思います(映画の為にジョン・レノンを学ぶのは情報が膨大すぎて大変だしね)。犯罪の対象は、チャップマンの場合たまたまジョンであっただけであって、彼が最も寵愛していたのは小説の方ですから。