『クローズZERO』に見るニッポン男児の美学

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   ※ネタバレが含まれています※
「クローズZERO」見てきました~。
小栗くんが主役じゃなかったら絶対見に行かない映画の一つなんですけど、この手の映画も実際見てみると案外おもしろいもんなんだな~って思っちゃいました。そういう意味ではこの映画は作戦勝ちですね!
とにかく、小栗くんが強くてカッコイイのはあったり前のことなんですが、高岡蒼甫くんがこれまたシブくてセクシーでよろしいんです。「パッチギ」もバイオレントな映画でしたけど、こっちの方が個人的には100倍好きですね。
あとは、”チビT”こと(って、今だに呼んでるのは私たちだけでしょうか?)桐谷健太くんが、ものすご~く男前で、飛び切りイイ役だったのが、新しい発見でした。
本当は殴る蹴るの暴力シーンが満載なので(おまけに苦手な泣き虫Y氏が出ているし)、大きいスクリーンで暴力映画を見に行くのにはためらいもあったんですが、予告編で見たシーンが余りにも(小栗くんが)キレイだったのと、番宣番組で「血まみれ映画じゃないよ」って小栗くんが言ってたので、見に行く決心がつきました。
で、見た感想はと言うと・・・。
三池監督のセンスの良さに改めてビックリしましたね!
素晴らしい演出ですよ!!
外国映画のドンパチ映画よりも、「テッペン獲る!」っていうシンプルな目標に向かって拳ひとつで勝負してる”この子たち”の方が、ずーっと健全なような気さえしてきましたもの。
そして、これは正に大河ドラマや時代劇と同位にある作品だとつくづく感じました。戦国時代の信長だの秀吉だの、って戦まみれのドラマが人気があると言うのなら、まさしく「クローズZERO」はストライクゾーンですよ。天下を獲る為に策略し、勢力を伸ばし、力を以って敵を制する・・・。
戦国武将が賛美されて、ヤンキーはNGなら、世の中どこか間違ってますよ。
ラストの戦闘シーンはヘドが出るほど長いんですが、すごく丁寧に綿密に撮られているので(映画全体もそう)、単に映像を見ているだけで見ごたえがあるんです。
そして、この戦闘シーンの主役はなんと言っても「雨」。
雨であることで、芸術性が高まり、人物が悲壮感に溢れて美しく、暴力が緩和される。これは、ニッポン映画の美学=クロサワ的アプローチでもあり、「ロード・オブ・ザ・リング」のヘルムズ・ディープの戦いに匹敵する演出効果であると言っても決して過言ではないです。
ここに三池監督の男の浪漫がプンプンと漂っているんですよね。
野郎と暴力を撮る監督としては見る側を配慮している方じゃないかな~。(北野タケシは別格としても)SABUや堤幸彦のような「クセ」を押し付けるヤラしさが一切ないんです。
とにかく映像がひたむきなんですよ、無駄がないし。
敵対する相手への友情とか畏怖の念がそこはかとなく描かれているし、それは陳腐な表現をすれば「男の友情」ってことなんですけど、この中には幾つものパターンの友情が表出しているんです。相対する源治(小栗くん)と山芹沢(山田くん)には共通の友人、時男(桐谷くん)がいて、彼を通して2人の友情がつながっているようにも感じられます。
また、芹沢と時男、源治と拳(やべきょうすけさん)の友情の物語も同時進行していくんです。
映画の導入として、これら2人の主人公の友人である拳と時男のエピソードから話がスタートしていくところも、この映画には「友情」が根底にあることを物語っているように感じます。
そして、塩見三省さん演じる刑事から最も象徴的に語られるのが、ヤンキーのメッカである鈴蘭高校でテッペン取ったやつ=目標を達成した人間、は、その先へ進むことができるというクダリです。
いわゆる『ピリオドの向こう側に行く』ってヤツです(笑)。
鈴蘭を制すことができずに中退した拳は、そこで人生が停滞してしまいヤクザの舎弟頭となってチンピラ生活をし、自分が成し得なかった夢を源治に託しています。そして、拳が所属する組と敵対している流星会の組長である源治の父親も、同様に鈴蘭でテッペンを取れなかったドロップアウト組。
だからこそ、父親を超えたい一心で鈴蘭の頂点に立ちたいと望む息子を静観しています。山の頂上に立てば、別の道が幾つも拓けていることが分かっているから・・・。
ここで、同じヤクザに身を落としている源治の父と拳との奇妙な共通点にも小さな友情を感じます。拳は命を賭して源治を守るのですが、それは本来自分があるべき姿、歩むべき道を源治に教わったからですね。ただ、ここで救われるのは、あたかも組長に粛清されたように思えた拳が実は組長に守られていたところですね。さすがVシネの王者、三池監督が成せるニッポンの任侠モノの美学がここにもまた横たわっています。
はてさて、山田くんは泣きの演技じゃなかったところが及第点かな。
今まで見た役柄のどれよりも遥かに良かったです!
でも、やっぱり役に入り込んでる感がちょっとウザイんだけど、これは好みの問題なので致した方なし。
最後に、音楽も非常にいいんですけどね~、やっぱり黒木メイサちゃんだけは要らなかったかな~。
そうそう、映画が始まる前に「陰日向に咲く」の予告が流れたんですが、岡田くんがスクリーンに映った瞬間、会場の女性から「はぁ~」という溜息とも取れる声がそこここから漏れ出しておりました。
そんなにため息つくほどカッコ良いルックスではなかったけど・・・。
岡田パワーを感じました。