「硫黄島からの手紙」を試写で見ました。うちの親戚に硫黄島で戦死した人がいると聞いていたのですが、映画を観終わって心から手を合わせたい気分になりました。私たちが当然だと思っている日本での平和な毎日は、硫黄島で散った兵士達が家族を守るために戦い犠牲になってくれたおかげでもあるわけで、血が繋がっているいないではなく、私たちの一人一人は彼らの子孫だと思え、彼らの分も自分に与えられた人生は大事にしないといけないのだと感じられる映画でした。
そしてなによりも、こんな戦争は2度と繰り返してはいけない!!
今回この映画を観る縁があったのは、今の平和な生活を感謝する気持ちを確認するという役割もあったと思いますが、それにしても”観る”という行動が相当キツイ映画でした。硫黄島という孤島は、沈没するタイタニックくらい救いようがなく逃げ場がないんです。この映画を観る=硫黄島でニノが演じた西郷が感じた恐怖や狂気を同じだけ体験したと思える位、私にはキツかったです。
それでもニノの顔が映る度に、これは映画・・・、これは過去の話・・・、という事が思い出せて、少し気持ちが楽になれるのですが、とかく彼が絡んでくるシーンは目を開けていられないくらい悲劇的なシーンが多いので、ハンカチを口に当ててないととてもスクリーンを観続けてはいられませんでした。自分とスクリーンを遮る物理的な何かがないと、冷静な精神で観れませんでしたね・・・。始まって直ぐに早く終って欲しいと願う映画ってめったにないと思うのですが、この点は戦争と同じで、この映画に関しても始まってまもなくして、早く終って欲しいと祈りながら観ていた自分でした。
日本人として、目を伏せてはいけないと思いつつも、何度も心が張り裂けそうになり、途中何度も帰ろうかと思ってしまいました。(このブログを書いていても心臓の鼓動が早まる位です・・・)
そう言えば私の隣にいた女性は、終始泣いてました。映画の後半は本当に泣いてる女性が多かったです。私的には「泣く」「泣かない」ってレベルの映画じゃないんです。そんな日常的な感覚が奪われてしまう様な恐怖にさいなまれました。またそう感じる事こそが、まずこの映画が制作された意図であり、この映画の素晴らしさなのだと数日経って思える様になりましたが、今でも正直この映画の事はあまり思い出したくないほどです。
「プライベート・ライヤン」「シンドラーのリスト」「キリング・フィールド」も同様に、映画を見た後に何日も強烈なシーンが頭から離れなかったのですが、この作品の登場人物がやはり日本人なだけにリアル度が増す分、余計に辛かったです。
邦画としては、「沖縄決戦」を小さい頃に親に無理やり見せられ、「二百三高地」も無理やり連れて行かされ、当時はなんでこんな映画を見せられるのか全く理解できなかったのですが、映画を通して戦争を知る事は親からの無言のメッセージだったのかもしれません。「硫黄島からの手紙」同様、上記は全て一生心に残る映画ですから。
当たり前なのですが、新鮮に驚いたのが、まず映画が始まる時に「WB」とか「Dream Works」とかのロゴが出てくるので、『おう!そっか洋画なんだよなぁ』とそこでまず感動しました。最後のエンドロールも、もちろん英語表記ですし。まぁ最近のトレンドとして、邦画でも英語表記が多いですが・・・、ニノに関して言えば、渡辺謙さんの次のNo.2扱いですから、すごい快挙だと思いました。ジャニーズからハリウッド作品にNo.2で出演する役者を輩出するなんて、ひと昔前にはありえなかったような気がします。
「硫黄島からの手紙」で私が最も高く評価したいのは、やはりアメリカ人が監督するオール日本人キャストの映画である事です。確かにちょっと日本人から観ると不自然な日本語があったりしたのですが、アメリカ人が日本側に立って大和魂をこれだけ忠実に描いた(私がどれだけ大和魂を理解しているかも疑問ですが・・・)のは、今までの作品と比べても高い評価(オスカー)に値すると思いました。少なくとも「ラストサムライ」の何倍もの評価に値すべきです!
そして、クリントが惚れたという「栗林忠道中将」という人物に私も強く魅かれ、関心を抱きました。あの地位にいてあれだけ国際的で、公平で、冷静且つ理性的な日本兵がいた事を知る事ができただけでも、価値のある映画です。彼の様な日本兵がいたという事実の普及をアメリカ人がこの映画を通して世界的に行っているといるという事自体も尊敬に値すると思います。逆に栗林中将が日本兵としてある意味奇異な人物だったからこそ、アメリカ人が映画にしたいと思ったのだとは思いますが。
また、日本側がアメリカ兵の捕虜を人道的に扱うシーンがあったり、逆にアメリカ兵が日本人捕虜を安易に殺してしまうシーンがあったり等、双方の(+)と(-)の側面がバランスよくあるのも、どちらかに偏っていない分、公平だと思えました。ただニノが演じた西郷は、実際どの位事実に沿っているのかは分かりませんが、ややハリウッド的なキャラクターではないかと感じたりはしました。実際西郷の様な思想を持った日本兵もいたとは思いますが、この映画における彼の存在によって元日本兵が侮辱されたと感じはしまいかと少し気になりました。
しかしそんな事はさておき、ニノの演技は素晴らしかった!まぁこの作品に限った事ではないのですが、セリフのないシーンの表情も演じすぎてなくて、繊細と無感覚と狡猾さと反抗と恐怖と勇気をそれぞれ巧みに演じ分けていた素晴らしい演技でした。
渡辺謙さんも「ラストサムライ」で助演男優賞候補になれたのですから、今回は主演男優賞候補に上がってもおかしくない演技だったと思いましたし、ニノが助演男優賞候補になるのも夢ではないと確信しました。
中村獅童さんの役はかなりコミカルで、なんだか最近冴えない話題が多い彼にちょっとぴったりだったかな?!なんて、意地悪にも思っちゃいました。加瀬亮くんは、(語弊があるかもしれませんが)彼にぴったりの役でしたし、イイ味を出してたと思います。「ハチクロ」に続いて好感度アップ!です。これからの日本映画界にとって重要な役者さんになると思いました。
まぁ、とりあえずの感想はこんな感じです。
全く硫黄島や戦争の事も良く知らない素人目線の感想ですので、あしからず! です。