映画三昧、でも万人には勧められない感じ・・・

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いろいろ語りたい事は山ほどあるのですが、とりあえず今回は最近見た映画について、さっくりと。
まず、アカデミー賞を総ナメしたと言っていいダニー・ボイル監督の「スラムドッグ$ミリオネア」ですが、やはりアカデミー取るだけあって、かなり見ごたえのある映画でした。グッドグッドグッド
ダニー・ボイルは子供が出来てからメローになったと言われていましたが、この作品はすごいです。「トレインスポッティング」並みにパンチが効いています。そして、ハートがえぐられるシーンしょんぼり、目をそむけたくなるシーンショックが何度も出てきます。悲しい
ムンバイが舞台の映画ですが、私自身ムンバイに行った事があるので、ごく漠然とではありますが、この映画で描かれている切実な人権問題や極貧状態で暮らす子供たちの姿はとてもリアルに感じられ、あんな風に大きな画面で見せられるとやはり改めて心が打ちひしがれます。
そんな極貧下の子供達でも、ものすごくたくましく生きているのが素晴らしく、碌な教育を受けていなくても、彼らが肌で学んでいく経験の一つ一つが後につながり、人生には無駄な経験など一つもないんだという事が実証されていく訳です。
みのもんたさん司会でお馴染みの「クイズ・ミリオネア」が物語の主体となっているのですが、脚本は「フルモンティ」を生んだ、サイモン・ビューフォイ。今作は、まるで宮藤官九郎さんの脚本を参考にしたかのような手法で、宮藤さんの作品を見慣れている人には、目新しさを感じなかったかもしれません。例え、もしそうだとしても、今作のストーリーや設定はものすごく斬新です。
サントラの素晴らしさも忘れてはいけません。「トレイン・スポティング」の時も音楽の存在が絶大で、私も当時サントラにはまって、何度も繰り返し聞いたものでした。
今回の音楽も印洋折衷というか、インドのポップソングやダンスミュージックをベースにして、インターナショナルに受け入れられる音楽へとフィージョンされているので、軽快なリズムがオシャレでカッコよくミックスされています。
そして注目すべきはエンディング。
インド映画のお家芸を大胆に踏襲しているのですが、あれだけ重い映画のエンディングがこんなにちょけててイイの?ってくらい、エンドロールも含めて楽しめます。これにはヤラレタ!って感じです。
でも、そのエンディングの時、なんだかすごく感動しちゃって、涙が出てきちゃいました。
万人に勧められる映画ではありませんが、テーマは「純愛」であり、非常にロマンティックな映画です。ちょっとケヴィン・コスナーの「リベンジ」を彷彿とさせるストーリーでした。
そして、万人に勧められる映画じゃないと言えば、「ミルク」もそうですね。これまた私が大好きなガス・ヴァン・サント監督による作品で、アカデミーも主演男優賞と脚本賞に輝いたんですが、それがきっかけで見ても、ちょっとピンと来ないと思う人の方が、多いかもしれません。
70年代のサンフランシスコのゲイ・ムーヴメントの草分け的存在である実在の活動家ハーヴィー・ミルクの話なのですが、ゲイに関する条例などなさそうな日本に比べ、アメリカの一部やイギリスなど、合法的に彼らの人権が守られている国にいれば、この映画の重要性が伝わると思うのですが、日本では理解しがたい世界に映るかもしれません。残念ながら・・・。
あと、ショーン・ペンがゲイの役って、私には中々ピンときませんでした。でも、彼は意外と実在のミルク氏に似ているんですね。びっくりでした。
Kurt Cobainオマージュの映画「ラスト・デイズ」のカート役の役者も本当にカートそっくりでしたし、そっくりさんをキャストするのに長けているのかもしれませんね。
それにしてもこの映画で再確認するのがアメリカと言う国の極端さです。国民投票によって、ゲイライツが問われ、結果その権利が確立できた素晴らしい国という一面もあれば、ホワイトタイのジェントルマンと思召す役人が、短絡的な理由で殺人を犯す国、そしてその罪が被害者がゲイだという事で軽減視された可能性を孕んだ裁判が行われた国。どれもアメリカという国のダイナミクスなんでしょうね。
Endless SHOCKのレポの中でも、ガス・ヴァン・サントの手法について記述したのですが、今回この映画の中でプッチーニのオペラ「トスカ」が絶妙な引用のされ方をしています。
70年代のアメリカを知る上でも重要な映画になっていると思いました。
そして「This is England」
80年代の負の遺産とも言えるフォークランド戦争下で、底なしの不況に喘いでいた時代のイギリスが舞台の映画ですが、まぁーこれも相当リアルできつい映画でした。
父をフォークランド戦争で亡くした主人公の少年が、「父への哀悼=愛国心」からどんどん右翼に傾倒していく話なのですが、当時のイギリスを良く知る私には、手に取るように理解できる世界でして・・・。
当時、イギリスの繁華街の至る所に「NF」と書かれたスプレーの落書きがしてあって、マギーが”異民族排斥運動”なんかを唱えていた事もあり、彼らの存在は旅行者にとっても脅威でした。
「NF」とは、「National Front(ナショナル・フロント)」の略で、「British Movement」と並び称せられる所謂極右政党なんです。後者はネオナチ団体ですが。
まぁ、この辺を説明し出したらきりがないので、このくらいにしておきますが、当時右翼系のキッズは、スキンヘッズと呼ばれていて、坊主頭にフレッドペリーのポロシャツ、ロールアップジーンズに細身のブレイセス(サスペンダー)、靴はドクターマーティンというファッションで、顔や首にタトゥーをしていたりしたんです。
でも、単に流行りのファッションとして取り入れているキッズも多く、スキンヘッズ=右翼ではなかったんですが。
そんな時代のイギリスの若者をリアルに描いている作品って、あまりなかったと思うので、イギリスのサブカルチャーに興味を持っている人には必見の作品です。映画の中には、思ったほど音楽面での接点はないのですが、当時カルチャークラブを筆頭としたヴィジュアル系バンドも流行っていた事もあって、当時のファッションやメークを振り返る感じでも懐かしい映画でした。
と、まぁ、最近は、こんなヘビーな映画ばかりを見る機会が多かった私です。
では、また来ます。
ばいびー。ジョギング