※ネタバレ注意※
ぶっさんは二度死ぬだな・・・。
って、クドカン作品に慣れきっている私には、この映画はそれほどミラクルだったようには思えませんでしたけど。
やっぱり、この映画の良いところは、他でもない、青森で全編津軽弁で撮った、そこに尽きると思うんですよね。
だからこそ、松ケンが生き生きと陽人になれたんだろうし、人の濃い結びつきとか、(ある意味閉鎖的な)生活習慣だとか、次々起こるミラクルな出来事だとか、ましてや陽人が迎える結末だとかも含めて全部、青森という、良く知られていそうで、実はそうでもない土地だから受け入れられちゃうんじゃないかなーって。
津軽弁のセリフが、もうホント全っ然聞き取れなくて、前半は半分流して見てるしかないんです(笑)、何となく場面の空気を読んで判断するって感じでして。でも、不思議と展開が分からなくなることは一度もなくて、これはまさしく”ミラクル”だな~と思いました。
陽人みたいな「大人子供」と言うか、子供で止まったままの頭のあったかい大人って、誰もが一度は出会った経験があると思います。それだけ、普通に存在している人たちなんだと思うんですけど、迷惑を被っていながらも町ぐるみで陽人を受け入れてるところが救われますね。田舎って結構逆のパターンも多いので。
陽人のおばあちゃんが、すごくイイんですよ。
自分が死んだら陽人の面倒を看る人がいなくなってしまうから、動けるうちにせめて自給自足ができるようにと、自宅の前に畑を作って農業をさせるわけです。でも、陽人には危険だし、調合が複雑なので農薬は使わせず、有機農法を貫くんです。
なのに、陽人は自分が育てた作物に青虫が付くのが気に入らない。
自分のアタマの中にはヘリコプターがいて、いつもバラバラ音をたててる。
ヘリはこの地方では農薬散布に使われているんですね。
で、ふとしたイタズラで農薬を浴びたら、ちょっと人が変わって、大好きな町子先生が自分を受け入れてくれた。
・・・だから、陽人はどうにかして農薬を手に入れたいと執着する。
まっすぐ過ぎるから手に負えないんですけど、「町子先生と両想いになりたい」って気持ち以外、その他には何も見えなくなる感じが、実に人間的で羨ましいかも。
結果、陽人は農薬を手に入れるのですが、案の定、それは彼を死に追いやることになり、でも、その反面ミラクルも起きる。
なんか、堤幸彦監督の「トリック」にも似ているところがあって、この作品はトリックほど面白おかしくはないんですけど、堤さんが描いていた田舎の人間模様だとか、奇想天外な事件だとかは、あながちフィクションでもないんじゃないかなと「ウルトラミラクル~」を見ていると、そう思えてさえきます。
相当ににグロイ展開も多々ありまして、例えば農薬を自分に撒くってことも充分グロイし、町子先生の元カレだった”かなめ”が交通事故で死んだとき、首が飛んで、その首はまだ見つかっていないとかいう(笑)横溝正史クラスのストーリーも挟まれているんです。
で、陽人は生き返ると、このかなめに手紙を書き続ける。
そして、ある時かなめに遭遇する。
(この出会いの道路のシーンは、周りが無人でとても映像がキレイ!)
ちゃんと首がないんです、このかなめさん。
ちなみに、かなめはARATAくんが演じています(顔は出ないけど・笑)。
しまいに、陽人はクマに間違われて猟銃で撃たれて死にます。
実は、松ケンファンのツボとしては、撃たれた時の死に顔が一番良かったりもする・・・。
おまけに、ラストシーンでは、陽人の遺言で彼の脳ミソをもらった町子先生が、陽人が死んだ森でクマに脳ミソを投げて、それをクマがうまそうに食べるというエンディング。
うへぇ~って感じなんですけど、すべてがファンタジックで、なぜかすんなり受け止められちゃうってとこがミラクル!
デイビッド・リンチ作品のように、何一つ理解できないまま、モヤモヤと消化不良に終わるケッタイな後味もなく、むしろ爽快感すらあったりして。
でも、さすがに最後の脳ミソのクダリは要らなかったかな~。
オシャレな映画でも、凝った映像でも、泣かせるストーリーでも、ましてや主人公に感情移入できるような作品では到底ないんですけど、なんか人間の根本的な感情を揺さぶられるような、そして何か眠っていた部分を掘り起こされるような、そんな感じが残る映画でした。
陽人を演じる松ケンは、本当にデッカイ子供そのもので、くるくると表情が変わって、くすぐられる表情も多いので見ていて楽しいです。
セックスアピールは全くないんですけど、夕陽の中で先生を待っている陽人とか、やけに男っぽく見えるシーンがあると、一瞬ドキっとさせられたりもして(ポッ)。
なんか、日常生活の中にある違和感だとか、不思議な世界にこそあるリアル、みたいなものを覗いてみたい方は見てみて下さい。