『中居正広という生き方』(太田省一/青弓社)MCが上手くて、踊りも上手で、野球が好きで、ヤンキー体質で、自らも認めるオンチで……。
中居正広という人間に世間が抱くパブリックイメージは以上のようなものだろう。国民的アイドル・SMAPの一員である彼の人柄は“特に知ろうとしないでも誰もが知っているもの”と認識されていて、それ故に深く掘り下げられる機会は少なかったと思う。
だからこそ、『中居正広という生き方』(太田省一/青弓社)を読んで、「自分はこんなにも中居クンのことを知らなかったのか……」と驚いてしまった。 例えば第一章のタイトルは「中居正広と本」。ファンの間では彼が読書家というのは有名な話で、過去のインタビューでは好きな作家は歌野晶午や松本清張などを挙げている。ラジオ番組やインタビューで本の話題が出ることもあり、そこではミステリー小説のほか『生きながら火に焼かれて』(スアド:著、松本百合子:訳/ヴィレッジブックス)などのノンフィクションを挙げることもあったそうだ。
また、「年に3冊に及ぶ手書きのノートを付けている」「19歳の頃に憧れの人物に挙げたのがチャップリンだった」「“芸能界でジャニーズなのにおしゃべりがいちばんできるようになる”という理想を昔から持っており、MC進出は長期計画に基づくものだった」なんていう情報も、多くの人には意外なものだろう。
明るい雰囲気や軽妙なトークさばきから、“軽いキャラクター”として見られがちな彼だが、実は努力家であり勉強家であり、仕事に対してとても真摯な人間なのだ。芸能界であれだけ多くの仕事をしているのだから、考えてみれば当たり前のことなのだが、そんな当たり前のことに気付かせてくれるだけでも、本書は読む価値のある一冊だ。
また著書の太田氏は『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)などの著書のある社会学者。膨大な参考資料をもとに綴られる文章では、中居クンの個人史や人柄が、SMAPという集団や社会との関係で分析されていくのが面白い。
少年野球で1番サードを務めていた中居クンが、小4の頃に「自分がピッチャーになったら、このチームは強くないからそれはやめたほうがいい」と考えるようになった……という話は、一つのエピソードとして面白いが、著者はそこに「野球を通じて自尊心よりもチームを優先する考え方を身につけていた」「そんな中居正広をリーダーとするSMAPだからこそ、デビュー次の苦境を乗り越えられたのだろう」と分析を加える。またその中居クンの考え方は、彼の愛読書・野村克也『野村ノート』の“弱者の戦法”とも繋がっていると続ける。
全文は以下にて。
情報源: SMAP・中居正広の生き方を社会学者が分析――実は読書家で、MC進出も長期計画に基づく戦略!? | ダ・ヴィンチニュース