新国立劇場 小劇場で上演中の三島由紀夫の戯曲「朱雀家の滅亡」を観劇してきました。
わたくし自慢じゃございませんが、こういった文学作品というか、現代古典というか、とにかくそういった正統派作品の舞台化を見た事がございません。
なので、初体験をする事をすごく楽しみにはしてたんですが、
想像を上回るAWAYな空気感に圧倒されました。
まずなんたって、観客の年齢層の高い事、高い事。
おいらなんて、若い方よ。
SHOCKや滝沢演舞場の客層なんて、比じゃないっす。
早乙女太一くんの舞台の客層もかなりのもんですが、
結構ミーハーな雰囲気が漂うし
空気が軽い
しかし、この劇場の客層は
なんか、どっから出てきたの?って位、正体が分からない感じだし、
男性も多いし、
三島ファン??
国立劇場ファン??
文芸作品ファン???
なんかミシェランの審査員みたいなんすよ、お客さんが
批評家風というか、
シリアスというか、
玄人目線の人が多い感じというか・・・
いや、あくまでも私が勝手に受けた印象なんですけどね。
とにかく、なんか、ただならぬ雰囲気でした。
そうかと思えば、2幕の始めからがっつり1列目で寝てた人もいましたが・・・
木村了くんが出ていなかったら、
生涯、この手の舞台を観劇する機会には、恵まれなかったでしょうね。
しかし、彼はチャレンジャーですね。
三島作品2度目なんで、「三島に呼ばれている気がする」と言ってましたが、
まぁ、三島さんも美少年好きだろうしねぇ・・・
とにかく、ものっすごく精神的にキツい舞台だと思いますよ。
およそ、エンターテインメントとは言えないですよ。
まずこの舞台の「演技」というパフォーマンスが、ほぼセリフだけで構成されているんです。
全てをセリフだけで表現し、伝える。
簡単そうで、一番難しい演技ではないかと今回の舞台を見てて思いましたね。
当然、見てる方も相当な集中力を求められるわけですよ。
原作を読んでいなかったら、私の様な木村了くん目当てのミーハーなおバカちゃんには、なんのこっちゃって感じだったと思いますね。
まず、あの時代(第二次世界大戦末期)の華族の話だから、
今を生きる一般人の考え方や価値観とは、全く接点のない世界であり
立ち振る舞いや言葉遣いも独特で
ある種時代劇みたい。
ただ私は、元々三島作品は好きで、学生の頃よく読んでたんですが、
まぁ、あの頃の青臭い自分が、三島を読んでどれだけ理解できたんだろうって
でも今、この機会に「朱雀家の滅亡」を読むと
あの頃に感じた衝撃が蘇ってくるし、
あの頃読んでいたからこそ、すっと馴染んでくる事にも驚きました。
なんか身体が覚えていたみたいな・・・
日本語ってこんなに美しいんだ・・・
日本人はかつてこんなにも崇高で、誇り高かったんだ
そして、こんなにも民族意識が高かったんだ
って事を再認識できました。
でも、悲しいんですよね。
それが。
その全てが、滅亡の際にある話なのでね。
朱雀家には、家を守り、と同時に、呪ってきてたとも言える弁天様が奉られているのですが、
私には、その弁天様が朱雀の嫁に課す呪いが、
三島由紀夫自身が女性という存在に抱いたかもしれない
嫌悪や嫉妬の象徴であるようにも感じましたね。
また、美しく、穢れのない青年・経広には、
母でもある女性に向かって最大限の罵倒を浴びせるセリフが与えられるのですが、
その遠慮のない罵倒も、三島の女性観を反映しているようにも思えました。
このシーンでは、私の席からは木村了くんの背中しか見えず、
罵倒を受けるおれいさんの表情しか覗う事が出来なかったんですが、
その表情を見ていて、涙が溢れ出てしまいました。
終いには、なんか木村了くんが、私に浴びせてる言葉のような気分になったりもしてね・・・。
今回は初見だったので、
特に木村了くんが出てる一幕に関しては、あまり他のキャストのセリフなどが頭に入って来なかったんですよね。
これは、いつもの事ですが。
しかもこれまた、お席が了席でして、
もう、目の前に立たれた時なんかは、
放心状態になってしまうのですよ。
自然と口角が上がって来ちゃうのを
こらえるのが至難の業なんでやんす。
それに長ゼリフがある事も分かってるわけで、
カミやしないかとか、もうドキドキで舞台に集中できなんですよ。
彼に限って、そんな事は滅多にあるもんじゃないって知ってても
やっぱ日程が早いと緊張してしまいます。
しかも、あの客層だし!!!
木村了くんが出てこない二幕は、すごいリラックスして、集中して観れました。
まぁ、2回目からはもっと落ち着いて、全体をじっくり味わうことができるかと思います。
それにしても、すごい舞台でした。
皆さまも、是非、観劇してみてください。
https://www.nntt.jac.go.jp/play/20000435_play.html
あっ、主演は國村隼さんです。
その他、菊田一男賞受賞の香寿たつきさん、「BANDAGE」の試写でお見かけした事がある柴本幸さん、近藤芳正さん。
たった5人しか出演しない舞台なんです。
では、また。