まず、冒頭で明言しておきます。
今世紀最大にお勧めできない映画なので、ジョニーだから見てみたいと思っている方は思いとどまった方がいいですよ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「チャーリーとチョコレート工場」のようなジョニーを期待されている方は特に!!
忘れてはいけません。
ダーク・サイドを描くのがライフワークである、ティム・バートンの作品だということを。そして、ナマナマしい殺人鬼の物語であることも。そして、最も重要なのは、ミュージカル仕立ててで歌に乗せてストーリーが展開していくという、余りにも奇想天外な映画であるということも。
とにかく、血まみれです。
「血」がダメ方は相当の覚悟がないと、ジョニーのルックスだけでは全編見ることはできないでしょう。銃なんて間接的な武器はありませんし、理髪師ですから剃刀でノド笛を掻っ切るわけです。
もう、スプラッターなみの血しぶきですよ。
そんなんですから、R-15指定になってはいるものの、私はR-18にしたいくらいですね~。高校生以下の若者には決して見せたくない殺戮映画ですから。
ここまで読んで萎えた方は絶対にNGです。
ジョニーも美しくないし・・・。
私はもともとジョニー・デップという役者はそれほど好きではありません。
好みのタイプと言えば、圧倒的にブラッド・ピット派なので。
でも、なぜかここ10年ぐらいのジョニーの映画はほとんど見てるんですよね。それは、私の興味の対象である作品にばかり出演するからなんです。
今回「スウィニー・トッド」のジョニーも本当に素晴らしいです。
ロンドン訛りはもちろん、ヴォーカルの素晴らしさ(←宣材資料によるとコレがイチオシらしい・笑)、舞台の経験がないのに、まるで百戦錬磨の舞台俳優のようなセリフ回しと声量、そして身のこなし。どこをとっても非の打ち所のない名演技です。
だから、ジョニーを昔から好きだった方には是非見て頂きたいし、彼の玄人はだしの名演技を堪能して頂きたいです。
ただ、失礼ながら、ここ数年のファンタジックな作品でジョニーを好きになった方にはちょっとキツイかも。それ以前の作品でも彼には「ヒート」や「シザー・ハンズ」、「ギルバート・グレイプ」などの名作がありますが、そのどのジョニーとも違うし、同じ様な作品テーマであった「フロム・ヘル」とも全く違うんです。
一方のティム・バートン側から考えてみても、彼はグロをファンタジーに変えるマジックを持っていますが、今回はグロに忠実です(笑)。リアルかと言うとそうでもなく、確かにファンタジーではあるんですがね。
どこまでが実写で、どこまでがCGなのかが判別できないほど緻密なのは「チャーリー~」と同様だし、血しぶきの上がり方や、血のしたたり落ち方、衣装、メーキャップ(←ちょっと「コープス・ブライド」みたい)などの細部も彼ならではのこだわりが満載で、一定の芸術性は認めます。特に、ひどく暗い画面が血まみれを緩和していることや、スウィニーの仕事部屋の窓から見える景色や天気の具合、小道具の細工の美しさetc…、バートンファンならば垂涎の作品だと思います。
でも、それらに充分目を配れる余裕と、自らの感情を移入しないというか、ある意味無機質に「映画作品なんだ」と俯瞰で見れないとかなり辛い映画だと思いました。
しかし、私のようにスウィニーの理髪店跡にまで訪れたことのある犯罪研究マニアには実録ファンタジーとして有益でした。
どっか自分の感情とは別物として見れる特技があるので、逆に映画が終わった後にミートパイが食べたくて食べたくて仕方なくなって、英国パブ風の飲み屋が試写会場のそばにあったもんで、そこに寄って言ってエールをパイントグラスで飲み、シェパーズ・パイ(ひき肉とマッシュポテトのパイ料理)を食べて帰っちゃった(笑)。
これは、自分でもスゴイな~って思ったけど。
それぐらい、脳が分離してないとお勧めできませんよ~。