「時計じかけのオレンジ」分かったふりレビュー

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初のおぐりん舞台参加ですよ!!
「タイタス~」から申し込み始めて、毎年、毎年、先行抽選に漏れ続けてきた私に、ようやく参加が認められました。YOUは蜷川はダメだけど、河原雅彦ならいいよって(笑)。
しかも、演目は”あの”「時計じかけのオレンジ」。
決まった時は、うへぇ~って感じでしたが(苦笑)、単純にこの作品をどう小栗旬が演じるのか、そして、こんな刺激的なタイトルを一体どう舞台化するのかとても興味深かったです。
若い頃にね、キューブリックの映画を見ましたが、もう何もかもがダメでした。
バイオレンス、女性蔑視、衣装、メイク、セット、キャスト、ナッドサット語、気取った音楽 etc…すべてがお仕着せがましくハナについて、私にはただひたすら醜く、阿鼻叫喚。とても若ぇ女子が観るシロモンじゃないと思いました。
それからというもの、私の人生の中で度々「オレ、『時計じかけのオレンジ』が好きなんだよね~」とかのたまう人間と知り合うことがあり、まぁ、そいつらがみんな揃いも揃ってペラッペラのいけすかない野郎どもだったり、偽物チックなデザイナーやミュージシャンだったりしたもんで、「あー、そういう類の人間が好む作品なのね」と勝手にカテゴライズしてしまい、そいつら含め作品ごとまるっとずーっと嫌悪していたのですよ。思いこみとは恐ろしいもんです(笑)。
原作小説に先に出合っていたら、やっぱり小説って個人の想像力に任せることができるので、普通に通り過ぎることもできたかもしれませんが、あのキューブリックのマスターベーションによって、確実にビジュアルが固定されてしまったので、もはや「時計じかけのオレンジ」と言えば、”あれ”意外を想定することは不可能ですし。
って、ことは、当然舞台もキューブリックを踏襲するわけで、その場合、”あれ”を(特に小栗くん目当てで見に来る)観客にどこまで、どうやって見せるんだろう?と・・・。
しかし、河原雅彦演出は、原作に忠実ながらもキューブリックが創出したビジュアルをツールとして巧みに利用しつつ、キャストのポテンシャルを存分に引き出し、なおかつ観客に歩み寄って見せるという見事な演出だったと思います。
高い寿司屋なんかに行きますと、客より板前の方が偉そうで、客はただ座って食ってりゃいいんだ的な印象ってありますでしょ?それが、スタンリー・キューブリックですね。で、「客の欲するものを知れ!」と武留守リリーに叩きこまれたスシ王子こそが、まさに河原雅彦氏なんですよ!。ちなみに「銀幕版スシ王子~ニューヨークへ行く」のシナリオは河原さん作ですが(笑)。
すいません!私にかかると、世の中の大抵のことは「木更津キャッツアイ」か、「スシ王子」か、「クローズZERO」で片がついてしまうので・・・・テヘッ。
しかし、おぐりんは出づッパリ!人格矯正プログラムのシーンで一幕が終わるのですが、拘束服にヘッドギア姿の小栗旬は、そのまま舞台上に残されたまま20分間の幕間を迎えます。もうね、皆さん何度もいらしているのか、へいちゃらでトイレ行ったりパンフ買いに行ったりするんですよ。おぐりんがステージ上で叫んでいるというのに!後ろの席のお客さんが最前列まで行って眺めていたりもするんですが、私はね、この光景が最も恐ろしかったです。劇中とのボーダーが明確にはない世界に見えて。拷問にかけられている人間を物見遊山で見に来てる群衆を見てるような錯覚を覚えましたもの(ブルルッ)。途中から叫び声は録音だったかもしれませんけど、いずれにしてもあれを毎日やるってスゴイな。
なんかね、小栗旬ファンには大サービスの連続でして。まず、生着替え(生ケツ)あり、客席に降りるシーンあり(この時、私の席のすぐ近くにおぐりんが来たー!ひさびさ近くで見たおぐりん、デカかった~・笑)、イケパラ以来の男子同士チューあり(しかも、相手が山内圭哉さん。むぎゅっ)なんです。もっと、バイオレントな凌辱シーンもありますけどね・・・ちょっとショッキングですね、コレは、やっぱり・・・。
イっちゃてる演技といえば小栗旬ってなぐらい、彼にとっては得意技なんだろうけど、ライブアクトで見るとちょっと生ナマしくて醜悪ですね。あれは色男にやらせるから緩和されるんですよ。あのメイクで、あのファッションでラリってるわけですから。前半はずーっとラリってるんで、見ているこっちまでフラフラしそうなんです。幕間なんか「トレイン・スポッティング」見終わった後みたいになって。
でも、劣悪かつ偏狂的な部分はある程度そのまま見せないと、「暴力=NG」というモラルを抱かせることはできないし、かといって暴力礼賛的な描き方は問題ですからね、もともとが映画よりもよりクローズド・マーケットである舞台向きな作品なのかもしれません。かつて、この映画がキッカケでの暴力事件が実際にあったそうですし。それだけ、確かにこの世界観はドキュメンタリーフィルムよりも若い感性にアピールする力が強い。
さて、おぐりんの歌とダンスについて・・・、多くは言及しませんが(笑)、頑張ってたと思います!エンディングで大人になったアレックスが歌うシーンは、なんかちょっとバカバカしい場面ではあるんですけど、普通にカッコ良かったもん。しかし、全てを若気の至りと片づける結末は「さっすが、イギリス」って思いましたね。破天荒すぎるやろ、自分!
小栗くんはねー、もうとにかくスタイルがいいんで舞台映えするんですよね~。ほんとカッコイイ!
バイオレントなアレックスと、人格矯正されたアレックスとでは当然演じ方が違うんですけど、人格が元に戻ってしまうとこでは発声まで違うから凄みがあるんです。
高良健吾くんはムロツヨシさんほどの存在感はないけど(笑)、逆に彼がライブアクトで存在感を消せるってのもすごいのでは?と思いました。ダンスもしなやかだし、歌えるみたいだし、今後に期待できそう。
役者さんは誰もが皆トップクラスの方ばかりなので、いちいち濃いしやたら巧い。で、1人の役者さんが実に多くの登場人物を演じるんですが、どれもこれもユニークで。特筆すべきは武田真治くん!彼はある意味、主役を食うぐらい素晴らしかった。同じホリプロだけに、木村了くんの影を感じましたね~(って、木村了くんの方がメッチャ後輩だけど)。
いやあ~、日本でこんな舞台見たのとりあえず初めてですよ。
ロックオペラと銘打ってはいるものの、それほど音楽寄りでもないし(でも、演奏は生バンド!これがイイ!)、アングラなニオイも残しながら、あれだけのビッグ・ベニューでこんなアブナイ演目をやってしまうなんて挑戦的!
かと言って「もう一回見たいか?」と言われたら間違いなく「NO!」なんだけど・・・(笑)。
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