「髑髏城の七人」レビュー ※ネタバレ※ #dokuro #髑髏城の七人

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 青山劇場に行って参りました~!!

年間5本ぐらいしか舞台は見ない私でも、やっぱり新感線の舞台は今の日本において最もクオリティが高いんじゃないか?と改めて思いました。

とにかく、人気に甘んじず常にチャレンジ精神に溢れているところが素晴らしい。キラーコンテンツと言えるこの演目で一気に若返りを図るなんて大胆過ぎます。まるで、今季のアレックス・ファーガソン(マンチェスター・ユナイテッド監督)のようですもの。確実に「新感線」の車内じゃなかった、劇団内も活性化されたんじゃないかなぁ~。

長いのでたたみます。


 

何よりすばらしいのはストーリー。まぁ、敢えて”脚本”だなんてハイ飛車な言い回しは使わずにおきましたが、単純に活劇らしくストーリー展開は判りやすくなっているにもかかわらず、小粋なツイストが最後の最後まで入っていて、それも1つや2つじゃないとこが常に起伏に満ちたワクワクした構成になっているんですね。メインキャストの見せ場作りがストーリーときっちり噛み合ってて強引じゃないし、登場人物が多いのにキチンと区別がつく。要するにそれぞれのキャラクターが、終始一貫、徹頭徹尾”立って”いて、見ている側も決しておろそかにできないんです。特に、三五や磯平あたりは素晴らしい!新感線には必ずこうした活きた脇役がいるところが痛快です。そして、相変わらず濃い右近健一さんや、今回はかなり贅沢な脇に徹した高田聖子さんの存在が、ものすごく光っていて、劇団ファンへのサービスも怠りなかった気がします。まぁ、高田さん演じる贋鉄斎については、コアファンにしてみれば、いろいろ賛否もありそうですが、私のようなチャラいキャスト目当てのオバちゃんには何の違和感も異論もございませんでした。

だって、「髑髏城の七人」を初めて見るんですもの!
これしか知らないんですもの。前の作品がどうのなんて、余り関係ないんですよ。
初めて見たのに楽しかった、驚愕もしました、そして戦慄しました。
それで、充分なのではないかと思うわけです。

前置きが長くなった(汗)。

さて、そんなあたくしでも、正直申し上げて1幕終わった段階では、全くノリきれなかったんです。と言うか、不安で一平ちゃんでした。

その原因は小栗旬その人でして・・・。
彼のソフトな声が捨之介のセリフ回しに合っていないような気がして、そして殺陣もかなり体が硬く感じましたし、太一っちゃんや森山未来くんの存在感が余りにも新感線にしっくり溶け込んでいただけに、おぐりん一人相撲的な印象が否めなかったんです。
着流しのはだけた裾から覗くおみ足やらスネ毛やら、下帯やらに萌えるしか時間の過ごし方がないと言うか(デヘヘ)、でも、あたくしには早乙女太一というお人がいるので、そちら中心に見せて頂いていたと言っても過言ではない!みたいな。

太一ちゃんの登場シーンは、いきなり下手からシャーッって飛び出してくるんですが、もうね、本当に3Dみたいに飛び出してくるんすよ。で、いつものように彼の殺陣を最大限に美しく見せる長めの羽織を着ていて、彼が動くたびにひらひらと袖や裾が舞踊る、早乙女ファンにはお馴染みの光景が拡がります。いつ見ても、何度見ても美しくて重みのある力強い殺陣。ただね、今回の殺陣は回り過ぎ!いくら動けるからってクルクル、クルクル回し過ぎですよ~川原さん(JAC)!。

一報のおぐりんの殺陣は、やっぱりなんか軽い。腰は落ちているけど背が高いので意識的にアップライトにした上半身が長すぎて違和感があるんですね。これは、私が1階後方のド真ん中
で見てたから、余計に俯瞰で見えたってのもありますが。「あー、やっぱおぐりんに新感線は無理なのかもな」と不覚にも思ってしまったワケですよ。でも、後で考えると、それが捨之介という人間なのかもなーと思いましたが。

しかしね、まんまと騙されてましたよ。
2幕でしっかり裏切ってくれました。
まぁ、小栗旬に騙されるんなら、女としては本望ですが・・・。

とにかく、2幕はハンパなかった。
おぐりんは、なかなか出てこなかったりするんですが、それでも出ている場面の濃いことったら。天魔王スタイルの捨之介も萌えポイントですが、まるで憑きものが取れたかのようにアップグレードする小栗旬の演技とアクションは文句のつけどころがありませんでした。私の席からは客席が良く見渡せるんですが、もうね、みんな張り詰めていて舞台に吸い込まれていましたもの。相乗効果っていうのは恐ろしいもので、役者同士が引っ張り合ってる感じがするんですよね。これは、若手を揃えた時ならではの醍醐味だと思います。体の疲労は別として、もっと、もっと、芝居が良くなるんじゃないかというポテンシャルをビンビン感じました。

他のキャストについても触れておきましょうか。
勝地くんは、実はあたくし彼のコミカルな芝居は、なんかうっとうしくて余り好きじゃないんですけど、この演目で少し彼の印象が変わったかな。かなり腕をあげていたような気がしますねぇ~。面白さの中にしっかりとした重厚感を感じましたよ。

女性陣も魅力的でした~。仲里依紗ちゃんは、去年の堂本光一くんと共演した、山本寛斎さんプロデュースの「七人の侍」でも拝見しましたので、なんか縁があるな~と。喉がだいぶキツそうでしたけど、映像作品で見るよりもずっと演技が安定しているような気がしました。小池栄子ちゃんは非の打ちどころがない存在感と運動能力で、さすが!という感じ。彼女の演技を「真夜中の弥次さん喜多さん」で見て以来、タダもんじゃないと思っていましたが、今回も見事にハマっておりました。

慟哭したのが森山未来くん。演技力はおそらく随一だったと思います。顔はメイキャップですごいことになってるし、被りものもあるので正体を無くしているんですけど、声も通って滑舌も良いし、彼が仲里依紗ちゃん演じる沙霧(さぎり)や、捨之介を殴る蹴るする姿は狂気そのもの。実はかなり繊細な部分を持っている天魔王の倒錯した人物像を、水を得た魚のごとく生き生きと演じていました。映像作品では線が細そうな印象でしたけど、全く感じませんでしたね。圧倒的な威圧感とズバ抜けた運動能力で、太一っちゃんとの殺陣はスピードがあって圧巻でした。

で、語らずにはいられない早乙女太一くんでございますが、今回はメイキャップが目の周りを大胆に黒く縁取った、まさに信長のしゃれこうべに魅入られたドクロのようなメイクでして、いつもの”早乙女メイク”ではなかったことも手伝ってか(笑)、妖艶過ぎるのにどこか儚げで、そのせいか、なんだかすごく痩せちゃったように見えました。哀愁に満ちた佇まいは彼独特の持ち味ですが、とにかく目線の配り方や、夢見酒を自ら呑む時の仕草なんぞは彼ならではの所作。しかも、このシーン、まず夢見酒を呑む前に、天魔王(森山未来)から口移しに毒を含ませられて吐血するのですが、このキスシーン、あたくしはたまたま双眼鏡でのぞいていたのでございますよ。太一っちゃんが未来くんに背中から抱かれている様を見たかっただけなんですが、その後にブチューっと。アヘ、アヘ、アヘ。今まで、綾小路翔&早乙女光(同じ早乙女でもエライ違い!怒)とか
、水嶋ヒロ&木村了という”男チュー”を見て参りましたが、これが一番刺激的だったかも。蘭兵衛は実は森蘭丸だったという展開だったので、こうしたボーイズ・ラブ的な場面があったのですが・・・。

太一っちゃんは自己プロデュースに長けたお方で、しかも(時には大胆に)毎度違った芝居をしたりするのですが、いのうえさんの演出以外で独自の裁量で動いている場面もあるのかな~ってのが気になりますね。例えば、一幕のエンディングで、白装束に身を包んだ蘭兵衛が髑髏城に単独で乗りこみ、敵をばっさばっさと斬り斃したあとで、舞台後方へゆっくりと背中を向けてハケていくシーン。彼は、荒くなった息をいつものように真後ろを向いて整えます。肩を動かさず腹式呼吸して八百屋舞台を上がっていくわけですが、歩きながら羽織から左手をすっと抜いて(おそらく)懐手にするんですね。こうすると、左側の袖には腕が通っていませんから、歩く勢いで袖に風が乗りひらひらと舞うんです。ここは、まさに早乙女演出ではないかと。それにしても、舞台上での太一っちゃんのオーラはいつ見てもギラギラでヴィヴィッド!

2幕後半で、捨之介の名ゼリフのあと、髑髏城の七人が横一列にラインナップして家康の軍勢に立ち向かう場面では戦慄します。歌舞伎の白浪5人男のラインナップみたいでゾクゾクするんです。ラインナップしたままで、映画のように真っ赤なライティングの中をスローモーションで戦の場面が進行し、最後に舞台奥でバックライトを背にして7人がシルエットで浮かび上がる所なんぞ鳥肌もんです!!もうね、「○○屋」って相の手入れたいぐらい(笑)。

この2幕の恐ろしいまでのテンポの良さと、随所にひねられたストーリーと爽快感溢れる結末にすっかり魅了されてしまい、幕間での不安はどこへやら・・・ですよ。

殺陣や芝居以外にも血糊を仕込んだりと、キャストさんたちもいろいろやらなきゃならないことが多いので、タイミングひとつハズすととんでもない事になっちゃうんですが、新感線の場合だと、そういった裏方の緊張感は全然伝わらない!そこもまた、イイんですよね。

いやはや、小栗旬を心身ともにここまでつき動かす新感線はアッパレでござんした!