「マイ・バックページ」試写レビュー

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だーれも、興味がない映画だと思いますがね、わははっは。

試写を見てきたので、さっくり感想をば。
公開前なのでたたみます。

JUGEMテーマ:映画

 



 原作は読んでいないので、前半はちょっと聞き取りづらいセリフを追うのに一苦労。学生運動の話だって前知識はありましたが、独特の言い回しや単語が始めは
ピンとこなかったり・・・。でも、やがて世界が見えてくると慣れるんですけど、原作読んでいない若い方は「なんのこっちゃ?」ってなるかもしれません。安
田講堂事件も、全共闘運動も、三里塚も共産主義も、この映画の中では全く説明してくれませんので。

妻夫木聡くん演じる沢田は、ジャーナリ
ストで運動家の梅山(松ケン)になぜか興味を持って取材したがる。先輩記者はいち早く梅山を胡散臭いと見抜くのに、沢田はなぜか朴訥なまでに梅山に心が傾
いていく。それは、梅山がなぜ徒党を組んだかと訊かれて「安田講堂をテレビで見て、”これだ!”と思った。自分のやるべきことを見つけた気がした」と、
取って付けたような理由を述べた時に、沢田は実は運動家に憧れを抱きながらも、なおかつ東大に在籍していたにもかかわらず、安田講堂事件を現場でただ傍観
しているだけだった自分を、どっかで悔やんでるんですね。だから、梅山の口から「安田講堂」という単語が出たことに妙な親近感を抱いてしまう。自分にやれ
なかったことを梅山がやろうとしている、とさえ感じたんじゃないのかなぁ?

松ケンが演じる梅山ってのがトコトン山師でして、大してうまく
もない嘘や虚飾に沢田はまんまと騙される。女も適当にあしらって騙すわけです。梅山を囲む人物といえば、演じる梅山を愛する重子(石橋杏奈ちゃん)と、な
ぜか梅山を尊敬してやまない柴山(中村蒼くん)と浅井七恵ぐらい。結局、重子は梅山が好きで、浅井は柴山が好きだから、ただ一緒に運動に加わっているだ
けってな感じなんです。

だいたい、梅山が学生運動にのめりこんだ動機や彼の哲学や思想が薄っぺらくて全然説得力がないんです。映画を見て
いてそこら辺りが気になって仕方なくなるんですが、時間が経過するにつれ、梅山の人物像が象られてくると、どーりで薄っぺらいことが判ります。そういう意
味では、この映画の冒頭シーンは重要ですね。

梅山はことあるごとに金をせびって、また記事を売らんがために、そして自身の虚構に真実味を持たせる為に仲間を罠にかけて自衛官を殺害。沢田もこれに加担させられるという結末なんですが、これが実際にあった話だってんだから驚きます。ちょっと銭ゲバっぽいのよね。


ンフィクション(多少の脚色はあると思いますが)ということもあって、ストーリーには厚みがありますし、映像もドキュメントタッチで、どこかオールド
ファッションでもありますが、それはあくまで狙いで計算づくめの映像です。1970年代のニオイさえ感じるぐらいの美術セットや衣装、ロケーションに感嘆
します。ひさしぶりに映画らしいテーマで映画らしい映像を見たな~という感じ。

そんでもって、女優陣がね、非常にいいんです。
脇で出てくる若い女優さんって、なんかテーマから外れていて邪魔くさい作品が多いんですが、石橋杏奈ちゃんや忽名汐里ちゃんは全くもって作品に溶け込んでいて素晴らしかった。
やっぱね、女性は弱そうで強い。そして、すべてを見越してる。この2人の登場人物はそう思わせてくれます。あと、山内圭哉さんがGOOD!です。

ラストの飲み屋で沢田が己の犯した過ちの大きさに気付いて1人泣きするシーン。ブッキーとしては見せどころです。

松ケンは胡散臭いながらも、(今とは違って・笑)かなり男前~。接写はドキっとします。「ノルウェイの森」同様、キレイな映像を残してくれてありがとう!!って感じです。ヅラっぽいところがちょっと気になるけど、それはファンだけだと思うので・・・。
こういうイヤらしい役っていいよねぇ~。また、ヤツはひとつ引出しが増えたな。

興行的には難しいでしょうな。
テーマが地味だし難しい。キャストのけん引力だけではお金を払って見るまでにはならないかな。学生運動に身を投じた”同志”のオジサンさんたちには一定の
評価は得られると思いますが、冷静に考えてそこターゲットに宣伝しないと思われ。原作ファンに対しては「WOWOW &
アスミック」で正解と思って頂ける仕上がりだと思いますし、ノンフィクション好きの私(=マイノリティー)は、こういう映画好きですよ。そして何より「映
画」として残す意義があると思います。日本の映画業界にはこういう番組もなきゃダメですよ!そういう意味では山内監督に撮らせたのも、これまた正解!

それでも、興行は難しいと思う・・・。