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  映画「真夜中の弥次さん喜多さん試写レビュー(ネタバレ注意)
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reviewed by
ミリオンダラ子 「ALL YAZIさん NEEDS IS KITAさん」
キリエ

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ALL YAZIさん NEEDS IS KITAさん・・・ by ミリオンダラ子 2005年3月15日  **ネタバレ注意**


主人公はゲイカップル。喜多さんはヤク中。愛する喜多さんを更正させる為に、お伊勢参りを決意する恋人の弥次さん。
・・・もちろん時代劇。

人物設定を聞いただけで、もう既にこっちがラリってしまいそうな内容で、しかも予習の為にしりあがり寿さんの原作コミックを読んだら尚一層あっち側に行ってしまいそうな気分でした。しかし、これを一体どう映像化するんでしょう・?クド監はこの二人の「愛」をどんな風に脚色するのか、そして、長瀬智也と中村七之助はどんな表現力を見せてくれるのか、想像するだけで分かりやすいような分かりにくいような、そう考えるだけでも、やはりもふんわりトランス状態になるような、そんな異色作の映画なわけですが。

フタを開いてビックリ!でやんす。
原作には(かなり)忠実だわ、キャストのカメオ出演は豪華なようで豪華じゃないわ(笑)、クドカン得意の時間系列のマジックや会話のキャッチボール、そして何と言っても長瀬智也が素晴らしい!!いや、弥次さんが愛おしい!所詮、智也ファンの私がベタボメしたところで、なーんも信憑性はないと思いますが、桜庭裕一郎で智也ファンになったあなた!そして「弟」で開眼したそこのお母さん!見事に裏切られますよ。彼の演技は、これまでクドカンの名の下で演じてきたマコトでもなく、はたまた虎児でもなく、確固とした江戸時代のべらんめぇ口調の繊細なハートを持つ弥次さんがそこにいます。そして、喜多さんへの溢れんばかりの愛情の深さに目頭が熱くなります。もちろん、愛の物語ですから濃厚なキスシーンもありますし(氣志團よりキレイだから安心です・笑)、同じ時代劇でも「水戸黄門」の由美かおるさんとは比べモノにならないほど強烈な入浴シーンもあります。すべてを弥次さんになりきった智也は、また一つ遠くに行ってしまったと思うほどの演技力です。脱帽!!
弥次さん、いじらしいっっ。そして、弥次さんかわうぃ〜!

七之助くんは巧いのが当たり前。そう思われて仕方ないサラブレッドではありますが、今回ただひとつ心配だったのは、クドカンの世界観の中で「浮いて」しまうんじゃないかってこと。でも、さすがは現代っ子。クド監の空気を絶妙に読んでバッチリ応えてくれています。七之助くん演じる喜多さんはヤク中で身も心もボロボロ。特に精神的にはリヤル(リアル=現実)と向こう(幻覚)の世界との区別がつかなくなっています。映画ではキチンとこの表裏を表現していて、リヤルとドラッギーな喜多さんワールドとが並行して進んで行くんです。途中、度々「ぬぁんじゃこるぅあ〜」と思う展開になるのですが、ストーリーに違和感を感じたら、それは即「あっち側」に行っているという証拠です(笑)。でも、リヤルサイドも充分あり得ない話が多いんだけどね・・・(笑)。

ディズニーとか、ミュージカルとか、そんな映画すら思い起こさせてしまう展開は一体なに?そして、クドカン得意の自作曲(宮澤タク氏参加)のオンパレードには爆笑に次ぐ爆笑。しかし、弥次さん喜多さんが劇中でソノシート・デビューする楽曲「真夜中の弥次さん喜多さん」は、「ラブラブマンハッタン」並みのソフトなミディアムナンバー。レコーディング風景まであるから、これまた爆笑!!なのに、すべて時代劇!うへぇ。・・・想像つかないでしょ!?しかし、サントラ制作がしっかりジェイストームってのは・・・ダブルうへぇ。

メインキャストもさることながら、旅役者風情なのに同心という金々(キンキン)を演じる阿部サダヲさんはハッキリ言って卑怯です!出オチはもちろんですが、何をしゃべっても腹がよじれる・・・そしてとにかく演技が上手くて、圧倒的な存在感を見せてくれます。後半になってからの出番なので、冒頭から出てきて欲しいくらい。なぜかとても豪華に感じるキャストのひとり。本当に覚悟して見た方がいいですよ。彼が喋ると自分の笑い声でセリフが聞こえなくなります(ってキャッツの時にも同じ様なこと書いたような・・・)。金々の相棒の岡っ引き、呑々(のんのん)役に柄本佑くん。この二人のやり取りもいちいち可笑しいっす。そして、もう一人特筆すべきキャストが古田新太さん。とにかく、どうしてあんな芝居ができるんでしょう??もうー、ズルイ!みーんな持ってっちゃいますからね。

他のカメオ出演をざっと列挙すると、行きすがりの町娘に磯山Pと彼女の右腕と言っても良いTBS宣伝部の青山女史(ちなみにこの映画にはTBSは出資していません)。ソノシートデビューをした「たわぁ麗講堂」の店主に原作者のしりあがり寿さん、バーテンダー役に「ピンポン」のARATAくん、その妻に麻生久美子さん。瓦版屋に生瀬勝久さん、時代考証に詳しい岡っ引きに寺島進さん、ラジオ番組そのままのシチュエーションで登場の毒蝮三太夫さん、笑いの宿の女将に森下愛子さん、同番頭役に岩松了さん。ご存知ヒゲのおいらんは松尾スズキさん。大人計画からは重要な役どころで荒川良々さんもご主演。それから、七之助くんのお父上、中村勘三郎さん、そして、そして、何とブッキーまでが登場します!まだまだこの他にもたーっくさんのクドカンらしい役者さんが東海道中を行き来するんです。中村勘三郎さんは彼のキャラクターにピッタリの朗らかな役で、息子が演じる「あっちの世界」を盛り上げてくれています。ブッキーの登場についてはナイショにしておきましょうかね。楽しみにしていて下さい。山口智充さんは「歌の宿」で本来のキャラならではの役柄でノリノリの歌と演技を見せてくれます。金々との絡みは、さながら山口先輩と猫田のようで思わずニヤッとしてしまいました。そして、女性キャストの中で光っていたのが弥次さんの女房役、小池栄子ちゃんと、あの世を彷徨う弥次さんを導く脱衣婆(だつえばぁ)役の研ナオコさん。小池栄子ちゃんの凄みのある演技は後半の映画をピリっと引き締めてくれます。研ナオコさんは飄々とした存在感で死の世界の管理人役を味わい深く演じていらっしゃいました。

ストーリーは箱根、沼津、と各地を巡るごとに、その土地特有の「宿」が舞台として場面転換していくんです。特異な宿場町で起きたイベントがテンポ良く進んでいくのですが、箱根では「笑いの宿」、西進するにつれ「喜びの宿」→「歌の宿」→「王の宿」→そして最後の「魂の宿」と続きます。木更津キャッツアイの時のように1回の表、裏のようにキッチリと展開が区切られていて、その境界ではしりあがりさんのイラストがスクリーンに広がります。東海道を進むにつれ、だんだんとストーリーは面白おかしいだけでなく、「王の宿」あたりからはかなり気味の悪い展開となりますし、画面の中で交わされている会話や画ヅラ以上に、意外にヘヴィーなテーマが根底に流れて行きます。ただ、全編を通して訴えられているのは、やっぱり「愛」なんですよねぇ。まさに、ALL YOU NEED IS LOVE。これほどケッタイな切り口で、これほどストレートに愛を訴える映画は今までお目にかかったことありません。「生と死」という普遍的なテーマも重要ではありますが、私はそれよりも何よりも、弥次さんと喜多さんの、そして、登場する人物たちが織り成すさまざまな形の「愛」が中核になっていると感じました。弥次さんは喜多さんだけではなくも女房のお初に対しても少し屈折した愛情を見せます。

衣装や小道具、セットはもちろんのこと、この映画はのCGは相当ゴイスーですね。秘かにお金かかってますよぉ。CGはキャッツのドラマと映画でその才能をいかんなく発揮(?)した曽利文彦氏と田中浩征氏というTBS布陣。曽利さんは「ピンポン」の監督とご紹介した方が失礼に当たらないかな(笑)。撮影はなんとこれまた磯山ドラマを支える山中敏康氏。ここにクド監のこだわりを感じますね。そして、衣装は新進気鋭の伊賀大介さん。なので、衣装はポップでダンディで新しいんです。でも、カッコいいようでカッコ悪い。ここもクド監作品らしいですね。まぁ、アスミック製作であるからこそ実現したスタッフ陣なのではないでしょうか?

公開前なので、余り細部について細かく触れられませんでしたが、この映画の上っ面だけ面白がって見て頂くも良し、深読みして考え過ぎて頂くも良し、徹底的に分からなくてちゃぶ台ひっくり返すも良し。でも、それはどれもすべて宮藤官九郎が否定するものではありませんので、結局「してやられてる」ってことになりますか。要するに感じるまま、お仕着せがましくないのが宮藤流です。でも、どんなに意固地に否定しようと思っても絶対1回は笑っちゃうし、関心しちゃうシーンがあるはずです、地の通った人間なら・・・。

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