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映画レビュー

reviewed by うらら


大真面目なコメディ作品

ドラマシリーズが好きだった方も、そうではなかった方も、銀幕版はドラマとは少し切り離して観ることをお勧めします。
ドラマのようなチャラっとした展開と演技を期待していると完全に裏切られますし、逆にドラマのアクの強さや執拗さが合わなかった方は、銀幕版にそういった敬遠する要素は少ないので、むしろ積極的に観て欲しいと思います。

まず、驚いたのは、フロントで演技をする役者さんたちは面白おかしい演技なんて全然していなくて、もっぱら笑いを取るのは脇というか賑やかしのキャストさんとCG効果だけ。これは映画では徹底していたように思います。台本からそうなっていたのか、演出していくうちに小ネタをそぎ落として行ったのかは不明ですが、変にこざかしく笑いを取る場面がないだけに、何か戸惑うくらい”カッコいい”んですよ!
ただ、笑わせるところは、これまた徹底して面白い!もう、本当にバカバカしいんだけど、腹がよじれるほど可笑しいCGマジックが施されているのでお楽しみです!!

そもそも米寿司という男は、琉球唐手の極意を会得する為にスシの修行を始めるわけですが、ドラマでは免許皆伝にまで上り詰め、琉球唐手の極意である「気泡握」を体得します。それを乗り越えたからこそ、少年の頃からのトラウマであった父親の死と正面から向き合うことができ、失くしかけていた弟と母親との絆を取り戻すという内容になっていて、彼の魂のルーツというか「家族」にストーリーの焦点が当たっていたと思いますが、その自己存在の根本を手に入れたことで、銀幕版では更に精神性の修練−人間として、どう生きるべきか−といった、抽象的で哲学的なテーマにステップアップされている気がしました。

なので、全編とてもクールなんですよ。司くんもクールだし、ニューヨークという舞台もめっちゃクール!そして、何より八十八のロケーションがクール!おまけに、シャリの極意を学ぶ師匠、源五郎が極上にクール!なんです。いつ、ふざけるのかな〜と思って待っていると、軽く期待を裏切られる非常にクールな作品に仕上がっていると思います。


武道と寿司道、行き着く先は極意なり

映画を観終わって改めて強く感じたのは、ドラマから一貫して描かれ続けている「スシを極めた者が琉球唐手を極める」という、一見荒唐無稽にも思えるテーマが自然に受け入れられること。両者共に”修行”という言葉で表現されるように、特に映画では”修行”という言葉が”米”と並んで重要なキーワードになっています。結局、スシであろうが武道であろうが、どんな事でも”極める”という事に共通するハードルは一緒なのかもしれない。それを達観しているのがこの映画だと思います。ただ、日本人になら分る深い精神性というか、唐手(空手)と寿司という日本人を象徴するテーマを掲げることで、全く接点がなさそうな両者を逆に分りやすく解説にすることになっているんだな〜と感じました。


やっぱりスゴイ、北大路欣也

堤監督の出演オファーに快く応じたという北大路さんですが、この話を蹴るならソフト○ンクのCMを蹴った方がいいですよね(笑)。だって、彼の役どころである源五郎は本当に純粋に真面目な寿司職人なんです。職人の本分をわきまえて、その務めを一心不乱に貫いている「職人気質」という形容が最もふさわしい御仁なんです。

でも、彼だからこそできる技っていうのが幾つかあって、実際に銀幕版にも出てくるんですけど、これが、まぁ、結構”あり得ない”系の技なんですよ。でもね、北大路さんが演じると柳生十兵衛や拝一刀の方がウソくさく思えるぐらい(笑)、こっちの方が信憑性があるというか、説得力が出るんです。言葉のひとつ、ひとつに重みと気品があって、でも、源五郎はニューヨークに店を持つくらいな人なので、人種とか年齢や性別、学歴なんかで人を判断しないフレキシブルなハートと愛情を持っているんです。

いや、さすがに彼の口から出た「司、SUSHI MUST GO ONだ!」には爆笑しましたけどね(笑)。


河太郎に見るSAMURAI SPIRIT

司が半年もかけて船で世界中を巡りながらニューヨークへ向かっている間に、いつものようにちゃっかり先回りして八十八に奉公し、スシ修行を積んでいた河太郎。そして、これまたいつものように、ちゃっかりガールフレンドまで作って、すっかりニューヨーク生活を満喫。
自分より後に八十八に来たくせに、どんどん親方に認められていく司に嫉妬をして、その弱い心をMr.リンに利用されてしまうのですが、最後の最後で彼は自分自身をとり戻し、司に対する敬意の念を自認します。時は既に遅かったのですが、体を張って司と源五郎の為に田んぼを守るシーンは必見です。

精神鍛錬ができていない河太郎は、人がどうであれ構わないといった、全く競争心のない、常に自分自身と向き合いながら、どんどんとステップアップして行く司に憧れを抱くと同時に、常に敵愾心を抱き続けています。河太郎はこの作品の中で一番現実的で人間くさい役柄ですよね?!そんな河太郎をそのまま等身大で演じた中丸くんには正直泣かされました。ドラマを見ていなくても、映画の中だけで彼の感情の推移は充分丁寧に描かれているので、見ている方に唯一近い存在である河太郎には自然に感情移入ができるのではないでしょうか?

彼が最期に見せた潔さ。それは、余りにもベタな表現ではありますが、ニッポン男児のSAMURAI SPIRIT以外の何モノでもないでしょう。


米寿司の「自虐の詩」

ドラマシリーズで「家族」の再生を果たした司は、ウオノメ症候群を克服しきれないままニューヨークへ向かいます。ニューヨークがどこにあるか分らない”ぶきっちょ”な彼は、とりあえず外国船に密航してNY入り。彼の修行の旅はエンディングのクレジットでたっぷり見せてくれますので、最後の最後までお楽しみです。

この司の不器用さは堂本光一という人物にも重なるのですが、要するに古き良き日本の男性像が集約されているのだと思います。アメリカナイズされた”スシ”は、寿司ではなく”SUSHI”でしかない。ましてや、エンターテインなプレゼンテ−ションで客に提供されるスシ屋の在り方は、司には一切認めることができない。なぜなら、寿司は日本人の心だから。寿司を弄ばれることは日本の心をも否定されるに等しいこと。そして、祖父の代からスシ屋を営んできた自らのルーツを否定されることになるからなのかな〜と。銀幕版では、ドラマよりもより濃く司の人間性というか、生き様が随所に感じられるようになっていると思います。

彼の実直さや芯の強さ、志の高さ、忠誠心、礼儀、そして、ウオノメ症候群を克服しきらない(症状は少し改善されてます・笑)といった、強さの裏に常に隠された一片の脆さ。それらは、皆「修行」という名の自虐の繰り返しによって彼の中で芽生えたもの。今の世の中に失われつつあるこれらの「美徳」は、米寿司の中にたっぷりと吸収されていることが改めて認識できる描き方です。無様なカッコ良さ、これが彼の魅力なんじゃないでしょうか。

そして、やはり寿司職人だった父親とのトラウマを抱え、強く在りたいと願って外人部隊に在籍した経験を持つ釈由美子ちゃん演じる稲子(←名前はホントふざけ過ぎ!笑)も、実は司と同じ人生を辿っているのが興味深いですね。二人がガチンコで闘うアクションシーンは、スピードとストップモーションを効果的に使った編集で、非常に迫力のある名場面になっています。司が”米を知った”時、まず最初に稲子に報告するのも、彼女に何か自分と同じ影を感じたからなのかもしれませんね。でも、司くんはオスとしてちょっと彼女に翻弄されたかな?!

皮肉にも河太郎を亡くしたことで友情や仲間の連帯感を学ぶことになった司は、最後は自分のためだけでなく八十八の為にリンと闘うことを決意します。ラストのリンとの格闘シーンは思わずスクリーンに引き込まれてしまいますよ!身体的にも精神的にも琉球唐手の真髄を極め、ひと回り大きくなった司が魂の「強さ」を発揮します。”ワイドー、ウツボ”のポーズでリンを仕留める瞬間の司の表情は、光一くんファンならずとも何度でもリピートしたくなるぐらいセクシー!!そりゃ、マトリックスシリーズで見たカンフーシーンと比較したら、その30%ぐらいのアクション度なのかもしれませんが(苦笑)、この映画には丁度いい緊張感とボリュームなのではないかと思います。あと、ドラマの時からそうだったのかもしれませんが、映画を見ていて気づいたのは、自然流の技かけをする際、本気モードの時では「ウミガメ」で頭は下げず相手に顔をしっかり向けているんですね。それから、個人的な司のツボシーンとしては、河太郎の身を案じながらも修行を続ける司が、夜、修行歌をポソッと歌っている姿。これに、なぜかグッときてしまいました。司がMr.リンと最後に対峙する時のセリフはどれもこれも胸に響く言葉で、まさにカンヌンキギダキの志に溢れています。本当にドラマからの断片がうまく収集されているな〜と感心します。


堤幸彦の美的センス

おふざけを最小限に留めたことで、映画作品としての起承転結がハッキリしたように思います。アニメ的要素もあり、もちろんコメディでもありますが、ヒューマンドラマ色も濃くなりましたし、娯楽作品としては肩の力を抜いて見れて、料金を払っただけのことはある一本になっていると思います。ジャニーズファンでなくても充分面白いし、見た後にも会話が弾みそうだからデートとしてもうってつけじゃないでしょうか?もちろん、年齢や性別も問わないのですが、唯一「堤幸彦ファン」にとっては、もしかしたら少し物足りないかも。

ただ、映像の部分では堤さんの本領発揮という美しい画がいっぱいで、やっぱり映画はニューヨークが舞台で良かったとつくづく思うし、アクションシーンではわざとブレを出した動きのあるカメラワークとスロー、早回しを駆使した映像編集は彼ならではの魅力に溢れています。八十八のロケ地となった”5poinz”を舐める画は圧巻ですし、美しい青空や田んぼの緑もとても印象的で、画面に溢れた色鮮やかな光景は叙情的ですらあります。

そして、サウンドの主張もちゃんとあって、それはストーリーを邪魔することなく一貫してクールです。トラックとしてではなく、音効もメリハリがあって、特に河太郎の重要シーンでは静寂に包まれる張り詰めた緊張感にたまらなくなって涙が出そうになります。アクションシーンでの殴る蹴るの効果音も鈍くて重いので、すごくリアルに聞こえます。

おふざけはゼロではないと安心して頂く為にも、ちょっとだけ堤流の小コネでツボに入ったものを紹介しましょうか。
まず、八十八乗っ取りを企むMr.リンの配下が、イタリアン・マフィアとチャイニーズ・マフィアというベタな展開(笑)。分りやすいんだけどさ〜、それでいいの?と突っ込みたくなりました。しかも、そのマフィアの親玉の名前がペペロンチーノ(笑)、Mr.リンがペペロンチーノに苦言をしにアジトに乗り込むシーンでは、ドアを開けると全員がペペロンチーノを食べているという・・・(笑)。あと、ガイドブックで見て八十八に食事に来る日本人観光客。全員もれなくアバクロの袋を持ってる(笑)。この方たち、ドラマシリーズでアキバアイドルを演じた、あの3人組です。ニューヨークだけに、回想シーンではウッディ・アレン、アンディ・ウォーホールやジョン・レノンの姿も。でも、一番サイコーなのは、レビューの冒頭でも触れた「腹がよじれるほど可笑しいCG」ですね。これが、どのシーンを指しているのかは、きっと銀幕版を見てもらえるばすぐに分ると思います。きっと、皆さんも同意見であることは間違いないです!

最後に「シャリの極意」=「日本人の魂」もさることながら、「唐手の道」=「寿司の道」という二等分線を、きっちり中点でつなげてきたテーマの収集力に脱帽しつつも、それに感心している自分もまた生粋のジャパニーズなんだな〜と苦笑してしまいました。「スシ王子!」というタイトルでニコラス・ケイジに笑いがとれたのも、まんざらではなくて、「HEROS」のマシ・オカよりも本気でワールドワイドにシンパシーをもって理解してもらえる映画になっているんじゃないかな〜。

今年のゴールデンウィークには是非、映画館の大画面で楽しんで下さい。
深読みしなくてもいいし、批判的にならずにいられる、出されたものをパクパク食べていれば、普通においしさが伝わる作品なので、素直にお奨めできますね。

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