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まったく、このオトコには驚かされてばっかりです。 このオトコほどのあまのじゃくなアイドルがこの世の中にいるでしょうか? テレビに映る彼の姿がいかに虚構であるかを、彼を知れば知るほど見せ付けられる思いがします。熱いハートを秘めた実像をひけらかさない彼のクールな態度には思わずハートが揺さぶられてしまいます。 森田剛は真面目な努力家です。 森田剛は決して自分をあきらめません。 森田剛はステージを、そしてライブ(生)を愛しています。 森田剛はどんな度の過ぎた期待にも応え、また失望しようと身構えている人を裏切ります。 森田剛には向上心があります。 森田剛はプロフェッショナルです。 テレビを見ているだけでは、一生かけても彼の情熱に満ちた実像には歩み寄れません。コンサートにたった1度でも来てくれさえすれば、それは瞬時に伝わるでしょうが。テレビが勝手に作り出す彼のイメージは、大人になった彼をただ寡黙にさせただけです。誤解を受けやすい彼が舞台を避けていたのも、パンフレットのインタヴューによれば「自分ならもっとこう演じるのに」とストレスを感じてしまうからだとか。舞台をやりたくなってしまう気持ちを抑えていたってわけです。これにはヤラれましたね。この私ですらすっかり騙されてました。彼は決してシアター興行を毛嫌いしていたわけではなく、プロとして「その時」が来るのを見据えていたんですね。このオトコ、タダ者じゃありませんよ。身の程を痛いほど熟知したプロ中のプロです。 そして、満を持して立った舞台の上で、彼は見事にジンを演じきってくれました。新感線ならではの早いセリフ回しも噛むことなく、しかも声量豊かに(マイクは入っていたと思うけど)、感情も豊かにジンの細かい心の動きをも見事に表現していました。立ち回りはダンスとは全く使う筋肉が違うとのことですが、舞うように剣を振りかざす様はなかなか堂に入っていました。剛くんの剣は「ロード・オブ・ザ・リング」の主人公フロドの持つスティング(つらぬき丸)のように、青白い光を帯びています。そして、これまたフロドの種族であるホビット同様に耳がとんがっているんですよ。髪も黒いので、どこかフロドの面影を追ってしまいました。 剛くん演じるジンは『魔物』です。 人間の女性と恋に落ち、彼女に永遠の命を授けた罪でツボの中に押し込められ、ツボを見つけた依頼人の望みを叶える使命を負います。そして、その数が1000とひとつになるまで呪縛から解き放たれないという設定です。ストーリーはいろんな映画や物語のエッセンスを感じはしますが、シンプル過ぎず、すべてのセリフや行動があとで必ずひとつに繋がってくるという伏線やひねりも散りばめられているので決して単調ではありません。セリフ、アクション、ストーリー、全てが痛快かつ爽快で、これが新感線ワールドなのかと興味を持たざるを得ない内容でした。数年前にマボ主演の「スサノオ」を見たのですが、あれは音楽劇だったので嫌悪感が先にたち、とても冷静に見ていられなかったんです。セリフも聞き取りづらかったし・・・。今思えば、あの時は私が全く舞台についていけてなかったんですね。今になってもう一度見直したいと反省してます。 剛くんは天性のカンと言うか、動物的カンと言うか、とにかくセリフ回し、感情表現、殺陣など、全てにおいてセンスの高さを伺わせます。みっちり稽古をした成果と言ってしまえばそれまでですが、やっぱり長年ライブを経験してきただけあって、立ち居振る舞いに彼なりの鋭敏な「カン」がみなぎっているんです。前半はかなり力が入って“がなる”場面が多く、見ていてもちょっと疲れるのですが、ストーリーが進行にするにつれ登場人物が増えてくると自然に抑えられてきます。ドラマのようにカットしながらの芝居と違って、終始演技をし続けなければならないし、絶えずオーディエンスの視線を浴びながらの芝居なので、舞台って本当に難しいだろうなーと思います。その反面、ノッて来さえすれば入り込んで役に入り込めやすいのかも。剛くんを見ていると特にそう思いました。彼は完全にジンに「入って」いたし、芝居が自然でした。キャラクターが、これまでに剛くんが(若い頃に・笑)演じてきた役柄に近いせいもあってか、彼にとってジンを演じる上でキャラクターにシンパシーは感じられたことと思います。初舞台でハードルの高い役、というか自分と遠いパーソナリティだったり、過去に演じたことのない役だったりすると、プレッシャーと違和感が強過ぎて演じ難いし、見ている方もしっくりこない。初舞台はこのぐらい近い方がいいですね。このあとは、オカマやろうが、人殺しやろうが、メロドラマやろうが、私的には何でもOKでございます。 そして、脇を固める役者さんが、もーう、とにかく素晴らしいんです! まず、悪役の剣風刃を演じた殺陣師の川原正嗣さん。橋本じゅんさん演じる魔界警察のドン・ボラーに「つんくに似ている」とツッコミを入れられていましたが(実際似ている)、彼が動き出した瞬間息をのみました。殺陣がとにかくキレが良くて美しいんです。余りにも動きが素っ晴らしいんでビックリしちゃった。パンフを見たら殺陣師だと分って納得!けっこう笑わせてくれる場面もあるのですが、立っているだけで役名通り鋭利なムードがビンビンと伝わってくるオーラが感じられました。 それから、風賀風左衛門を演じた田辺誠一さん。これまたビックリでした。とにかくドラマや映画の田辺さんしか知らなかったので、あの飄々とした、そして時にいじくそ悪く、はたまたちょっとヘタレ系の癒し系の演技、そんな印象とは180度ぜんっぜん違うんです。まず、声が違う。ありゃ、田辺誠一じゃねぇな・・・って思うほど違う。そして、セリフ回しや表情に到るまで、それまでの田辺誠一像は全く通用しなかった。なので、違和感&先入観が適用される機会が一切なく見る事ができました。「役者なんだなぁ〜」なんて、当たり前なんだけど改めて思い知らされました。結構、細かい芝居をしてたりして、憎々しい場面では睨みつけたくなるくらい、とことんワルい顔をしていましたね。風左衛門のキャラは田辺さんのファンの方も大満足できる役どころだと思います。最後に剛くんと一対一で闘う場面があるのですが、ここでは舞台装置を上手く使って距離感を演出していました。と、言うのもやはり風左衛門は長身ですからね、まともに対峙したらジンはサイズで負けてしまう。ここは明らかにジンが勝つ展開ですから、それを上手くカバーするように舞台に施された傾斜の上と下で絶えず入れ替わるような立ち回りになっていました。先に触れた殺陣師の川原さんと風左衛門は悪者コンビなのですが、この二人とオーラのない殿様、伊神義光とのクダリは最高にオカシイですね。 そして、「あー、これが新感線なんだなぁ」と思わせてくれたのが橋本じゅんさん。彼の存在感たるや溜息でるほど。宣材写真ではフレディ・マーキュリーがビレッジ・ピープルのようなコスチュームでしたが、実際にはそれほど濃くもなくて(中身の法がずっと濃いもんで・・・)、コミカルな場面では映画版ー「スタスキー&ハッチ」のスタさん(Ben Stiller)がオーバーラップしそう。少しハスキーな声だけでも魅力的なんですが、存在感がハンパない。私は古田新太さんの舞台を見たことがないんですが、きっとこの上を行くパフォーマンスなんだろうなぁ〜と想像を巡らせていました。何しろ新太ファンの話を聞く限りでは彼はカリスマそのものですから。大看板役者の新太さんの次に控える役者さんがこのレベルってことは、劇団☆新感線に大いに興味を持ちました!マボの「スサノオ」の内容についてはほとんど覚えていない自分でしたが、今回「荒神」で新感線が得意とするアプローチを改めてみる事によって「あーあー、そうだった」と思い出すこともしばしば。特にバイクで坂を乗り越えるように登場する場面とか、脱力するようなコミカルなアクションをしつこく繰り返さないと先に進めないとことか・・・キーマンとなったジイ役の さんの存在も外野の人間からすれば非常に新感線らしいキャストだなぁ〜と感じました。 また、女性キャストについて書くの忘れちったので、ついでながら触れておきますか(笑)。 ジンの恋人サラサーディとと笑わない女王を演じ分けた緒川たまきさんは、想像していたよりずっと良かったですね。女性キャストには余り期待していなかった(と言うより関心がなかったと言うほうが正しい・笑)ので、ケイト・ブッシュのようなアンニュイでコケティッシュなムードに溢れたお姿はキレイでした。一方の山口紗弥加ちゃんは相変わらずでしたね。やかましいと言うか、大人になってないと言うか、役のせいもあるかもしれないけど、彼女のキンキンした物言いはドラマでも舞台でも同じようにやかましくて、どうしても好感を持つことができません。まぁ、キャラクターには合っていたとは思いますが。 最後に、この舞台といい、「演技者。」もしかり、密かながらもどんどん実力をつけている剛くんの今後のお芝居がすっごく楽しみで仕方ありません。近頃は世の中「岡田准一祭り」だけど、是非10周年を飾る年一度きりと言わず、年にせめて一度は森田剛にこうした華やかな機会を与えて欲しいと思います。連ドラでもいいから・・・。そんなこと言っても、来年には剛つんが芝居に興味なくなっちゃったりして・・・(笑)。