皆既食 – Total Eclipse- 観劇レポ

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岡田将生くんの初舞台「皆既食」を見て参りました~。

目下、絶賛上演中なのでネタバレ回避されたい方はご注意を!!

いつも、いろんな舞台を観劇する度に感じていたことがありまして・・・。

特に松ケンが初舞台を踏んだ折に強くそう感じたのですが、岡田将生くんをなんだかんだかれこれ10年近く見てきている私には「将生は舞台はムリだろうな~」って思ってたんです。

ドラマのメイキングや、がんばりました大賞系の番組でも既におなじみの、セリフ噛んだ時の慌てぶりとか、映画の舞台挨拶での挙動不審な佇まい(笑)とか、そんなこんなも原因のひとつではございましたが、彼って余りにも可憐で美しいので、スクリーン映えするが故、いかにも映像向きと言うか、定点で見る舞台よりも引いたり寄ったりできる映像作品の方が醍醐味がある役者さんなのではないかと勝手に評価していたわけです。

でも、舞台の彼はこれまでの映像作品で培った経験に裏打ちされた存在感と、最大の武器である容姿を見事に活かし、瑞々しいながらも堂々と板の上で演じてくれています。

正直、この演目そのものには対して興味が持てないし、翻訳劇のストレートプレイってちょっと苦手だし、ってのもあるんですが、実在の人物を描いているってことを観劇後にwikipediaで知りまして(苦笑)、まだまだ知らないことって世の中にはたーくさんあるんだな~って思いましたですよ。

「ヴェニスに死す」や「ドリアングレイの肖像」を思い起こすような、退廃的な禁断の腐向けストーリー(って、随分安っぽい表現をして蜷川さんごめんなさい!)なんですが、生瀬勝久さん演じる才能に行き詰った詩人ヴェルレーヌが本当にラテン系白人の最たるイヤらしいところがてんこ盛りの男でして(No To Racism!!)、見栄っ張りで煮え切らないばかりか八方美人でDV野郎という”カス男”なわけですよ。

でもって、将生が演じるランボー(スタローンとは無縁です)も、これまた輪をかけて自意識過剰な夢見る夢子ちゃんだわ、ヒモだわ、ホモだわで、こちらも”クズ男くん”でしてね。なんだ、こいつら”だめんず”じゃん!って、肉食オバの私には鼻持ちならねぇどころか、詩人としての才能すら疑われるほど、ある意味イカれてるんです。

目先の快楽と理想にズブズブに溺れて、金もないのに生きる為の努力もせずに霞を食って生きてるような日常の繰り返し。

でも、ランボーがねぇ、愛しいんですよ。立っても座っても寝転んでも、甘えても怒っても泣いても、そのすべてを容認したくなるんです。ヴェルレーヌも同じ気持ちだったんじゃないかなぁって、そこは同調できますね。

DVDは既に廃盤になっているようですが、映画版「太陽と月に背いて」では、ランボーをレオナルド・ディカプリオが、ヴェルレーヌをハリーポッター シリーズでおなじみのディヴィッド・シューリスが演じたそうですが、このキャスティングでもお分かりのように、ランボーには圧倒的な「若さ」と「美」が必要なわけです。

なので、今の将生にしか絶対に演じられないだろうし、そのドンピシャさ加減は、蜷川さん!さすがだわと思いました。

ウェービーな茶髪に萌え、シルクハット姿に萌え、でっかいパイプを吸う姿に萌え、ベッドでゴロゴロ~に萌え、とにかく岡田将生を観るだけで価値がある舞台です。こんな安い感想だけだと、演者さんとしては「もっと他に言うことねぇのかよ!」と憤りたくもなると思いますが、こと岡田将生くんに関して言えば、初舞台はこれでいいんじゃないかな~って私は思うんです。板の上でも負けない彼の存在感を内外に示せたし、岡田将生の「時」というか時間の断片、大袈裟に言えば人生の断片をランボーを通して演じることができたのではないかと。25歳の、そして初舞台の彼にしか見せられない表情や演技は、もう金輪際ないんですから。

11/22公開の「想いのこし」ではポールダンスや女装に挑戦し(女装はイケパラやオトメンでもやってたけど・笑)、来年公開の「ストレイヤーズ・クロニクル」では本格アクションと、次々と新境地を開拓して脱皮していく彼の背中が少し頼もしくなってきたように思います。

最後に、生瀬さんについて何も語りませんでしたが、あの御方は(アドリブ含め)決して裏切りませんので安心この上なく高貴なゲス野郎を演じていらっしゃいますです。