映画「MW-ムウ-」試写レビュー

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         ※ネタバレ注意※
7/4(土)公開の”禁断の”映画「MW-ムウ-」の試写を見ました~!
観終わった後、ものすごい倦怠感に襲われてしまいました。
それだけ、全編通しての緊張感というか、張りつめ感があって、まるで「24」を一気に見倒したような気分。
何がスゴイって、玉木宏くんが、これでもか!ってほど極悪非道なんです。
めっさ狡猾で頭脳明晰、しかも身体的能力も高い・・・なのに、フトした瞬間に見せる脆さもあり、そのブレンドが絶妙。
初の悪役とのことですが、ここまで怜悧でロボットのような表情や演技は、これまで見たことなかったので、魅力に取りつかれそう(エヘヘ)。
いつもの、人なつっこそうな”へのへの”っとした笑顔なんて、この映画では皆無ですから。しかも、役作りの為に7kgも体重を落としたそうですが、それが本当に血の通わない結城という男の冷徹さを増幅させていましたね。
トレーラーやチラシの内容だけ見ていると、なんか「20世紀少年」と似てるかも・・・、なんて印象を受けたのですが、全く違ってました。
昨今の、いわゆるダークヒーローものに多い、平和を願うからこそ破壊が必要なんだという誤った大義名分を掲げている-要するにそれが「テロ」ってことなんですけど-、ってパターンではなく、玉木くん演じる結城は大義名分すらない殺人鬼なんです。一応、復讐心からスタートしてはいるんですけど、終いにゃそれもどうでも良くなっていて。
ただの悪党、ホンモノの殺人鬼なんです。
でも、なぜ彼がそうなったかという経緯というか、理由づけはちゃんとあるので”救い”はあるかな・・・。
どれほどの製作費を投入したのか計りしれませんが、相当作り込んで、隙間なく丁寧に製作されてます。何より手塚治虫の唯一の「禁断のピカレスク」を、見事に具現化しているのは驚嘆に値します。キッチリと原作に向き合っていて、多少のマイナーチェンジはあるものの、展開も終末も原作通りですし、こうして映像を見ることで、逆に原作がいかに極端に優れた読み物であったかを知らされます。
これはね、世界で公開しても勝負できる映画ですよ!!
山田孝之くんについても触れておかないとね(笑)。
「クローズZERO II」から、図らずも彼の顔ばっか見ている印象が強いですが、「MW」では結城に翻弄される賀来(がらい)という役で、犯罪に加担しながらも神父として贖罪を続けているという、象徴的に”弱い”人間を演じています。
実は、この映画の中で、賀来が一番感情的な人間なのかもしれないです。
だって、彼はただ単に結城を”愛している”に過ぎないんですから。
ひたすら結城を想い、彼を助けることができない自分を責め続けることで生きる価値を見出しているような、超ネガティブ人間なんです。
その激しいながらも抑えた感情を、山田くん得意の”じっとりと重い”演技で(笑)、表現してくれています。
犯罪者と神父のルックスが逆転しているのにも「意味」があるんですよね~。
この映画のテーマは、言わば2つの「相反する近似値」と言ったら良いのでしょうか・・・。
全く違うのに実は似ているというか、表裏一体というか。
タイトルの「MW」というアルファベット2文字も、これらを反転したら、どっちもMで、どっちもWになり得る。
光と闇
善と悪
白と黒
男と女(Man & Womanの頭文字で「MW」という説もあるそうです)
これらすべての対比が見事に映画の中で描かれているんです。
彼らの服装は象徴的に黒と白であったり、でも冒頭ではそれが反転してるんですね、ストーリーが進むにつれ黒はより黒く、白はより白へと偏る。
結城と賀来は、原作ではかなりねっとりとしたホモセクシャルなのですが、映画では”ほんのり”と、それが伝わる程度にしか直接的な表現はしていません。でも、冒頭に玉木くんのシャワーシーンをわざわざ持ってくるとこなんぞは、余りにも原作に忠実なので、内心かなり期待感を募らせてしまったんですけど(笑)。
そして、時折、映像が物理的に強く色づけされたり、逆に暗すぎたり、カメラが揺れたり、画の捉え方が不自然だったりするのですが、それが見ている者の集中力や緊迫感に多くの刺激を与えるんです。非常に緻密に研究されて撮影されているので、そういう点でも邦画っぽくないというか、世界に通用する映像美になっていると思います。
フロントのお二人は、やはり女性を牽引する力が強いので、男性の目にはなかなか止まらない映画かもしれませんが、映画自体は非常に男性的だと思います。
女性には逆に敬遠されてしまうかも。
とは言え、やはり玉木くんのビジュアルは最高なので、殺人とか「血」が苦手な女子は、玉木くん目当てだけで観に行ったとしても、期待以上の彼が見れることは間違いないです!!
あと、石田ゆり子さんも衝撃的な役どころでした。
男性諸君はこちらにも乞うご期待!