映画「告白」レビュー

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             ※ネタバレ注意※

感想の持ちようがない映画って、あるんだな~と実感しています。
映画見てこんな気持ちになったのは初めてかも。
なんだろ、心を「無」にしていないと受け止められないし、言葉が見つかりません。
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良く戦争映画などで、実体験した元軍人やら戦禍にあった市民の方たちにインタビューしたりする番宣番組があると、必ず彼らは「実際の戦地は映画なんかで表現できないほど凄惨だった」って必ずおっしゃるじゃないですか、現実はあんなもんじゃねーんだと。でも、戦争を知らない私たちには”想像”を巡らせることしかできなくて、彼らが体感した温度やニオイなんかは伝わらないわけで・・・。そういう感覚に似ているような気がしました。
要するに、私が一番疑問に思ったのは、今を生きるリアルな中学生って、この映画以上に救いようがない生き物なのか、それとも映画(小説)だからヤリ過ぎてるのかが判断できないんです。さすがに、1つのクラスルームに限ってこれだけの事件が起こることはレアだとしても、このクラスで起きたイベントをピース分けすれば、1つ1つの邪悪なピースは毎日のようにどこかで必ず起きているのかもって、妙に説得力を増してくるところが何とも恐ろしいです。
「邪悪」と一言で表現しましたが、では果たしてそうなのでしょうか?
中学生って、精神的にまだ弱くて充分”子供”なんですよね。子供だから自分のことしか考えられないし、後先考えずに短絡的な行動に走ってしまう。それが取り返しのつかないことだと言うことは、ちょっと理解できてはいるんだけど、自分の感情が勝ってしまう。人生経験もないし、人を思いやる余裕もなくて、ましてや自らの行動に対する責任感なんて、ほんの少ししか育っていないでしょうし。それにしても、1度ならず2度3度と罪を重ねていく様は狂気に満ちています。
この映画では3人の母親の姿が描かれています。
二人の加害者のうち、一方は母親に捨てられ、もう一方は溺愛されている。どっちにしたって同じような子供ができちゃうってことなの?それが、もうなんか痛切に悲しいです。
本作の主人公である松たか子さん演じる森口先生は、被害者の母親。シングルマザーで学校に娘を連れてきていたが為に娘が”実験”のターゲットになってしまう。被害者とはいえ、ここにも母親のエゴを感じぜざるを得ないんですよ。毎日連れてきていた学校なのに、娘が何をしていたかまでは把握できていないし、犯人Bの母親のセリフにもありましたが、私もそもそも学校に娘を連れてくること自体問題があるのでは?と思えてしまうし・・・。そりゃ、娘を抱えて生きていくには働かなきゃならないでしょうけど、シングルマザーという”大義名分”で、娘を学校に連れてくることを正当化していたのではないだろうか?そして、なんぼ娘を殺されたからといって、精神的に未成熟な生徒を操ってここまでの復讐劇を成すとは、教育者として、そして母親としていかがなものかと・・・。だから、主人公にすら同情することができないんで、なおのこと救われないんですよ。
はじけんばかりに躍動する学生たちの映像の裏にはとことん深い闇が潜んでいて、映像ではそれが美しく表現されていました。デ・キリコの描く世界のような・・・と言うよりも、光と闇が混じり合っているような映像。暗いのに光がまぶしい感じとでも言いましょうか。これは張り詰めた空気に一層の緊張感を加えていました。血しぶきなんかも生々しいですし。
このクラスの生徒って本当に悪党ばかりで(笑)、先生の娘を殺した同級生を、まるで魔女裁判にかけるかのごとく制裁するという、これまた子供たちなりの”大義名分”という名の暴力でイジメ抜いていきます。悪い奴を懲らしめてなぜあかんねん?と、大見得切って堂々と追い込む徹底した排他的思考、負の連鎖、乏しい連帯感、枯渇した師弟愛・・・。
でも、結局すべては”大人”の仕業なんですよね。
それにしても、犯人Aのシュウには連続殺人犯などが持つ典型的な”気質”のパターンが見て取れます。確かに彼は気の毒かもしれないけど、彼の犯罪傾向には同情の余地がありません。余りにむご過ぎる。とり憑かれているというよりも秩序的かつ確信的。
もう一方の犯人Bのナオ・・・。森口先生の子供を殺す瞬間の彼は悪魔そのもの。もう、思い出すだけでやり切れません。もーう、隣の家のイヌ!可愛がってやってたんだから助けろよ!なんて八つ当たりしたくなるほど不必要でやるせない殺人なんだもの。
HIVの誤った知識・・・これは、まぁオプションとしてはどうかな?と思いましたが、犯人Aは武器としてちゃんと使い道を知っていたのも背筋が寒くなります。
最後に犯人Aに撲殺されてしまう少女も、実際、中坊にあれだけの薬品が集められるもんやろか?と受け流すには無理くさい展開もあるのですが、私が現実を知らないだけなのかもしれませんね。
で、誰が一番許せないって、岡田将生演じるウェルテルですよ~(笑)。
「無邪気な邪鬼」頭悪すぎ!でも、その実は逆なのかも。まんまと生徒が術中にハマっていくのを静観できていたとしたら、コイツが一番性悪だよなぁ。岡田将生くんの演じ方も、オスカー・ワイルドの戯曲のように、どこか狂気に満ちていてゾッとするんですよね~。出番は少ないんですがインパクト大でしたね。「悪人」の増尾役にますます期待が募ります。
まぁ、2度観たい映画ではないですね、正直。
いくら、ドッカーンとやってくれたとしても、ちっともモヤモヤは晴れないですもん。あの、最後の爆破も実際遂行したんでしょうかね?それともHIVの時のように追い込むだけのホラなんでしょうか?原作はどのように完結しているのでしょうか?
観ようかどうか迷っている方には「気になってるなら、とりあえず観てみれば」と言うことにしましょう。中学生キャスト含め、役者さんの演技だけでも観る価値があります。